〜 ハッピーバースデー 〜



旅の途中 とある街の とある宿屋――――――     



サ 「ロクス。 ちょっとお願いがあるんだけど」

ロ 「何だ? どうした?」

サ 「あのね・・・。お金頂戴!」

ロ 「ダメだ。(キッパリ)」

サ 「なによぅ! 何もそんなにスッパリと断ち切らなくてもいいじゃない」

ロ 「どうせ またくだらんモノを買うんだろう? 無駄使いは許さない」

サ 「ふん。 聞く前からそうやって決めてかかるのは ロクスの悪い癖よ」

ロ 「今までの経験上 聞いた所でくだらん確率は92%だ」

サ 「ちっ」

ロ 「(だから 姫が舌打ちなんかするなっ!)」

タ 「どうしたの サラシャ? 買い物に行くなら一緒に行きましょ。
   丁度アタクシも買いたいものがあったの。 お金ならアタクシがなんとかするわよ」

ロ 「タトゥミ。 あまりサラシャを甘やかすな」

タ 「あら そう? たまにはいいじゃない。 ね、サラシャ」

サ 「・・・・・・。 私 行かない。 タトゥミ一人で行って来たら?」



いつもなら 飛びつくはずのサラシャが タトゥミの誘いを断り

気のなさそうに そっぽを向く。



ロ 「サラシャ ひねくれるのは勝手だが タトゥミに当たるな」

サ 「・・・あー、そだ。 買い物に行くのなら ついでにアイス買ってきて」



感心出来ないその態度に 注意をするロクスをも無視し

サラシャは また自分勝手なことを言い出した。



タ 「え、えぇ。 構わないけど。 でも それなら一緒に行って自分で選んだほうが」

サ 「なんか 面倒くさくなってきたし」

ロ 「サラシャ! いい加減にしろ」

タ 「いいのよ ロクス。 アタクシなら気にしてないから。
   それじゃ ちょっと出かけて来るわね」



そう言い タトゥミは少し淋しげに 一人で買い物へ出かけた。





タトゥミが宿屋から出たのを こっそり窓から確認するサラシャ。



サ 「よし 行ったわね」

ロ 「行ったわね じゃない。 さっきの態度はどういうことだ?」

サ 「もう うるさいなぁ。 ロクスってば。 忙しいんだからお説教は後にして」

ロ 「そういうわけにもいかない。 だいたい面倒くさいと言ってた奴が何が忙しいんだ」

サ 「だから これから忙しくなるのよ。 ちょっと黙ってて!」



ちょいと険悪な雰囲気が流れる二人に気付いた フジール達。



フ 「あーぁ。 サラシャのわけわかんない我侭が また始まったよ」

ヒ 「今日のサラシャは ご機嫌斜めみたいだね」

リ 「お? 何だ 喧嘩か? ド派手にやれやれ♪」



サ 「ちょっとワケありなんだから そうつんけんしないで欲しいわ。
   とにかく時間がないんだから。
   そういうわけで 内野も外野もピッチャーマウンドに集合!」

ヒ 「(え? 内野? 外野? 汗)」

フ 「(ピッチャーマウンドって? どこだよ?汗)」

リ 「(相変わらず 意味不明な姫さんだ。 汗)」

ロ 「はぁ・・・。 すまないな。 とりあえず 集まってやってくれ」←慣れっこ



ロクスの一言で しぶしぶとみんなが集まる。



リ 「で 何なんだ?」

サ 「あのね 何を隠そう今日は タトゥミの誕生日なの!」

フ 「え? そうなのか!?」

ヒ 「そう言えば 覚えやすいゴロ合わせって言ってたような」

ロ 「では さっきのお金の使い道とは・・・」

サ 「そうよ。 何かプレゼントを買おうと思って」

フ 「つーかさ 知ってたんなら 予定を立てて小遣い残しとけばいいのに」

ロ 「(フ、フジールが 最もな意見を言っている。驚)」

サ 「余計なお世話よ フジール。 それが出来れば苦労はしないわ」

ロ 「(それも 最もだな・・・。汗)」

ヒ 「まぁまぁ。 じゃあさ みんなで盛大に祝ってあげようよ」

リ 「あぁ 悪くないな。 祝いといえば 酒が付き物だしな」

フ 「やるんなら タトゥミを驚かせてやりたいよな?」

サ 「うん。 賛成♪ だから タトゥミのいない今の内に計画をたてよぅ!
   それでね プレゼントのことなんだけど・・・」

ロ 「何か良いものがあるのか?」

サ 「着物がいいかななんて思ったりもしてたんだけどね。じっくり考えた結果・・・」

ヒ 「うん 結果?」

サ 「みんなで坊主頭にするってのはどう?(ニッコリ)」



男衆「・・・・・・・・・・・・・」





男衆「却下!!」





サ 「ちぇ。 つまんないの」



男衆「(つまるつまらんで 坊主頭にさせるな!)」



サ 「それじゃ 普通のパーティーになっちゃうけどいい?」

フ 「そ、そうさ。 普通が一番に決まってんじゃん!」

リ 「異議なし」

ヒ 「そうだね。 へんにこだわっても・・・ね。
   あ! ほら、坊主頭はもっさーに任せてさ」

サ 「もっさーは最初から ツンツルテンじゃないの。あんまり有り難味がないよぅ」

モ 「も・・・ もっさ〜。(しゅん)」

ロ 「と、とにかくだな タトゥミが帰ってくるまでに用意をしないと」

サ 「そうね。 ぜんは急げってやつね!
   まずはタトゥミへのメッセージを紙に書いて。 ほら、早く!」



サラシャに言われ 渡されたメモ用紙に それぞれが誕生日のメッセージを書き添えた。

そして サラシャがそれを回収。



サ 「OK♪ じゃあ次 ロクスはお酒の調達を。 フジールはご馳走の調達ね!
   それから ヒヨは部屋をパーティー仕様に。
   私はその間にケーキを作るわ」

リ 「て、手作りなのか!?」

サ 「そうよ。 何か文句ある?」

リ 「おおありだ! この間のバレンタインデーで この俺にカレーのルーを
   ただハート型に抜き取ったチョコ(偽)を渡した奴が手作りケーキなど!」

サ 「失敬ね。 あれは 甘いものが苦手なリュールを思ってのことだって
   私の優しさがわかんないの?」

リ 「そういうのを有難迷惑っていうんだよ!」

フ 「心配しなくても大丈夫だって。 サラシャはこう見えて そこそこ料理は出来るから」

ヒ 「うん。 チョコレート(本物)も上手に作ってあったよ」

ロ 「あぁ それなりの教育は受けているからな」

サ 「そういうこと。 リュールが心配するようなケーキは作らないから安心して」

リ 「・・・なら いいんだが。(いまいち信用ならない)
   それで 俺は何をしたらいいんだ?」

サ 「リュールには時間稼ぎをしてもらいまっす。もうすぐタトゥミが帰ってくるだろうから
   パーティーの用意が出来るまで タトゥミを連れ出して」

リ 「時間稼ぎたって・・・ どうやって」

サ 「賞金稼ぎなんだもの それくらい簡単でしょ」

リ 「時間と賞金は 何の繋がりもないぞ!」

サ 「時間を賞金と思って稼げばいいのよ」

リ 「(いや もう ぜんぜんわかんね。汗)」

サ 「あっ。 言ってるそばからタトゥミが帰ってきたわ」



買い物を終え 片手にアイスを持って部屋に戻ったタトゥミ。



タ 「はい、サラシャ。 約束のアイスよ。
   どれにしようか迷ったけど 新発売の“メロリンラブアイス”にしたわ」

サ 「うん ありがとう」

タ 「ところで みんな集まってどうしたの?」

サ 「べ、別に何も・・・」

タ 「そう? ならいいのだけど・・・」



ぎこちないサラシャを気にしながらも 買ってきた物の整理をし始めるタトゥミ。

そのタトゥミに気付かれないようにサラシャはリュールの脇腹を小突く。



サ 「ほら リュール早く

リ 「仕方ねぇな・・・ゴホン



リ 「あー、なんてこった。 タバコが切れた。 買いに行かねぇと」(超棒読み)





すんごぃ わざとらしいし!!



リ 「そういうわけで タトゥミ。 タバコを買いに行くぞ」

タ 「え? どうしてアタクシが? 貴方のタバコでしょう。 自分でいってらっしゃいよ」



そりゃ そうなるだろぅ!



リ 「いいから来いって言ってんだ。 ・・・酒をおごってやるから」

タ 「それならよくってよ。(あっさり)」



無理やりだけど ナイス リュール!



なんとか上手くタトゥミを連れ出すことに成功したリュール。

部屋を出る際 後ろを振り向くと サラシャがもっさーを使い

みょよよよ〜んと その両手を大きく左右に広げていた。

もっさーの あまりの伸び具合にギョッとしたリュールだったが

なるべく長〜く時間を稼げという意味だと理解し 部屋を後にした。





サ 「さてと。 それでは 皆のもの リズムを上げて準備に取り掛かれー!」



サラシャの号令で各自任務をいっそいで遂行した。







タバコを口実に外に出たリュールとタトゥミ。

取りあえず店に向かい タバコを買うと ものの10分で用事は終わってしまった。



リ 「(やべぇな。 さすがにまだ戻れないだろ。 どうやって時間を稼ごうか・・・)」

タ 「リュール? どうかして?」

リ 「い、いや。 何もどうもしない」

タ 「じゃ 行きましょうか」

リ 「!! それだけはダメだ!」

タ 「何よ 今さらダメとは言わせなくってよ。 お酒を奢ってくれる約束でしょう」

リ 「あ・・・。 そうだったな。 酒だ酒!
  (てっきり宿に戻るのかと思った。 助かった。 これでなんとか時間稼げるだろう)」



手ごろなビールを買い ぶらぶらと歩く二人。

すんなりと一本目を空けると タトゥミが小さく溜め息をもらした。



リ 「何だ!? やっぱ 一本じゃ足りないか? 二本目買ってくるか?」

タ 「サラシャ・・・」

リ 「あ? サラシャがどうした?」

タ 「アタクシ サラシャに何か気に障ることでもしたのかしら?」

リ 「別になんもしてないだろ」

タ 「えぇ。 自分でも思い当たる節はないのだけど。
   今日のサラシャの態度は いつもと違っていたから。
   もしかして 嫌われたりしてたら・・・」



先ほどのサラシャの態度が やっぱり気になっていたらしく

タトゥミは不安な思いを リュールに告げた。

サラシャの目論みを全て知ってるリュールからしてみれば

それは取り越し苦労なことだとわかってはいたが

肩を落とすタトゥミを見て 少しばかりフォローを入れた。



リ 「・・・全くの逆だな」

タ 「逆? それはどういう意味?」

リ 「ま、もう少しすればわかることだ」

タ 「何よそれ。 答えになってないじゃないの。 もういいわ。
   アタクシ2本目・・・ いえ、3本5本と買ってくるから」

リ 「(って、おぃ。 やけ酒かよ!)」



その後二人は 街をぐるぐるまいまいして

いい加減歩き疲れた頃 時間もガッポリ稼いだことだし 宿屋へ帰ることにした。

宿屋の前に来ると 窓腰にサラシャの姿が見え

またももっさーの両手をみょろ〜んと伸ばし 大きくマルのサインを出していた。



タ 「な、なんの合図かしら。あれ。(汗)」

リ 「ふっ。 イッツ・ショータイムの合図だ」

タ 「なにそれ!?」

リ 「これで タトゥミの不安もぶっとぶってことさ」





一体何のことやら 皆目見当もつかないまま 部屋のドアをあけるタトゥミ。

すると そこには・・・・



何故だか ラジオのDJブース(もちろん製作者ヒヨ)がセットされていた。

もう なんかめっちゃ謎!!



DJブースの中には チェケラッチョなサラシャの姿。

これには リュールもビックリして銜えてたタバコを落っことしてしまった。



リ 「お、おぃ・・・。 ロクス。 話がぜんぜん違うじゃねぇか。これのどこが普通のパーティーなんだよ!?

ロ 「ぃゃ、俺も買出しから帰ってきたら 既に・・・。
   しかしサラシャのことだ。何か考えがあって・・・と、願いたい




そして 呆気に取られてるタトゥミを前に サラシャはお構いなしエセDJを始めだす。



サ 「ハローエブリバディ! ご機嫌いかが? 今宵はサラッティーノのDJっぷりに酔いな」



ヒ 「(サラシャ。 危ないくらいにテンション上がってるな。汗)」

フ 「(てか サラッティーノって!? 何だよ! 汗)」



とにかく皆 ハイテンションなサラシャを静かに見守った。



サ 「まずは お便りの紹介だよー。
   えーと、これはラブチュ王国にお住まいのペンネーム“ぉ世話係り”さん」



ロ 「(PNと言ってもバレバレだろ それ。 それに何故“護衛隊長”でないんだ!)」



  【いつもうちの姫が世話になってすまない。 感謝している。
    そしてこれからも 良いお姉さん役でいてやってくれ】



タ 「・・・え?」

サ 「はい 続きまして ペンネーム“タバコを切らした千人斬り”さんからのお便りです。」



  【酒ならいつでも喜んで付き合うぞ。
    どちらが底なしかは・・・ 勝負しなくてもわかってるけどな】



タ 「・・・これって」

サ 「お次は チキン王国にお住まいの“もっさー愛好家”さん」



  【その強かさに頼らずにはいられないけど 決して無理はしないで欲しい
   疲れた時は僕が肩を貸すよ】



タ 「もしかして・・・」

サ 「またもラブチュ王国からお便り。ペンネーム“これはお茶目の象徴だって言ってんだろ”さん」



  【前に危うくぺっしゃんこにされそうになったけどさ もうぜんぜん気にしてないからな。
   で、 いつか俺にも魔法を伝授して下さい】



タ 「まさか・・・」

サ 「最後のお便りは やっぱりラブチュ王国から“キュートなお姫様”から」



自分だけ そんなペンネームかよぅ!



  【いつも可愛い私を(自分で言っちゃう!?)可愛がってくれてありがとぅ♪
   私もいつか貴方のような綺麗で賢い女性になりたいです。
   感謝の気持ちは言葉では言い表せないけど 一言で締めくくるとするなら・・・
   タトゥミが大好き!】



タ 「サラシャ・・・」

サ 「はい、せーの!!」

全員 「タトゥミ 誕生日おめでとう!」



思いもよらない出来事に タトゥミはその場に立ち尽くす。



フ 「ほら タトゥミ。 突っ立ってないでこっちこっち!」



フジールがタトゥミを呼ぶと そこにはご馳走と酒とケーキが

華やかに並べられている。



サ 「私がケーキを作ったのよ♪」



サラシャが自信満々の笑みをタトゥミに向けると

タトゥミは言葉なしで喜びの笑みを見せ 強く頷いた。 

感極まっているんだな これが♪



サ 「さぁ ろうそくに火を灯して」

ヒ 「了解♪」

サ 「お次は明かりを消して」

フ 「ほぃよっと♪」

サ 「じゃ タトゥミはろうそくを消すスタンバイね!」

タ 「ありがとう みんな。 とても・・・ 嬉しいわ・・・」



静かにろうそくの光が 部屋に広がり ケーキを囲うと

そこには タトゥミを見つめる 皆の笑顔があった・・・・。







ハッピー・バースデー☆タトゥミ

貴方にとって よい歳になりますように。

そして これからもよろしくね♪