〜 夏の海 T 〜



サ 「暑い 暑い 暑い―! くそ暑すぎる―ッ!!」

ロ 「暑いのはわかるがな…。 くそは余計だ」

サ 「だったら この暑さをどうにかしてよぅ。 護衛隊長として腕の見せ所よ!」

ロ 「無茶言うな」



いくらなんでも気候を変えることは無理なので

少しでもサラシャが涼しくなるよう ロクスは静かに扇子を扇ぐ。

これだから ぉ世話係りと間違えられるんだ…。 と心の中で呟きながら。



夏といったら バカンスよね!

サラシャ姫の一言で みんなで海に来たはいいものの

太陽のあまりの活躍っぷりに 楽しむことすら忘れ ただ暑いを連呼するサラシャ姫。

言いだしっぺのくせに だらしないったらありゃしない。



ヒ 「よし! 出来た!」

サ 「何が出来たの〜?」

この暑い中 汗水たらし何かを作っていたヒヨの一声に ちょっと興味を示すサラシャ。



ヒ 「夏といえば やっぱりかき氷だろ? だから かき氷機を作ってみたんだ」

フ 「さっすが ヒヨ! じゃあ早速食べようぜ! って、肝心の氷がないじゃんか」

タ 「あら? 誰かをお忘れじゃなくって? 氷ならアタクシが用意出来てよ」



タトゥミがふふんと笑みを見せ 呪文を唱えると氷が出来て

これで冷たい冷たいかき氷を作ることが出来た。

シャリシャリかき氷を食べてサラシャのご機嫌も 上昇気流に乗る。



サ 「冷たくておいすぃ〜♪ てか、イタタタ! でもこれこそカキ氷の醍醐味よね」

リ 「夏のかき氷もいいけどよ。 なんつーか派手さが足りねぇな」



かき氷をかっこんで 頭をトントンするサラシャの隣で

ロクスが扇ぐ扇子の風のおこぼれを与りながらリュールがぼやくと

何かいい案が浮かんだのか サラシャが腕を振り上げ立ち上がる。



サ 「派手さ…ねぇ。 そうだっ! アレをしよう!!」

リ 「おっ! なんだ 祭りか!? それとも花火か!?」





















というわけで 各地域代表ビーチバレーが行われることになった。

参加チームは下記の通り。

【ラブチュ王国】 サラシャ・ロクス・フジール

【杜の都】 タトゥミ・パッピ・ミャカ

【チキン王国】 ヒヨ・レヴ・マオン(助っ人参加)

【賞金稼ぎの町】 リュール・仲介所のオヤジ・プー二(こちらも助っ人参加)



さて ここからは 審判兼ナレーションのボク イクノがお届けするよ。

本編じゃ まださわりしか登場してないから チーム参加は無理だったようだけど

執筆者の優しい配慮というか 誕生日祝いも兼ねて この役を与えられたようだね。

ま、だからといって はりきるボクじゃないけど。

とりあえず ボクのルールでやらせてもらうよ。 それ位の我侭は許されるだろ?



イ 「それじゃ さっさと始めよう。 まずは対戦相手を決めるおみくじをひいてもらおう」

リ 「てか、おい! あみだくじならまだしも おみくじってなんだよ!」

イ 「ピピー。 審判にたてを突くともれなくイエローカードなので気をつけるように」

ヒ 「いや でも おみくじって…。 大吉や小吉でどう対戦を決めるんだろう」

サ 「簡単なことじゃない。 大吉を引いたチーム同士が試合するのよ♪」

一同 「あ、な〜るほど。
    ……って、数あるおみくじで同じのが出る確率がどんだけあると思ってんだよぅ!」

ロ「その辺は 乾に・・・だろ?(ヤレヤレ)」

サ「そー言うこと♪ てか そこ! ヤレヤレ言わない。 趣味ネタ万々歳よ!」





そんなわけで 対戦相手を決めるだけで 結構かなりの時間がかかったけど

ボクが仕掛けることに 誰も文句は言わせないさ。 なんせナレーションだからね。

キミ達の運命は ボクが握ってると言っても過言じゃないのさ。



イ 「対戦カードは次の通り。 第一試合【ラブチュ王国VSチキン王国】
   第二試合【杜の都VS賞金稼ぎの町】 地味にトーナメント戦だから
   負けたチームは 地団駄を踏みながら応援に回ること。
   試合のルールは 面倒だから何でもありってことで。武器の使用も認めます。
   以上 何か質問はあるかい?」

フ 「質問っつーか…。 地団駄を踏む必要はあんのか?」

サ 「何言ってるのよ フジール。それは大有りよぅ。
   負けた悔しさを表しながらも応援するのよ?
   高校野球で負けた学校が 甲子園の砂を拾って その後勝者の学校を
   応援するのと同じよ」

フ 「た、例えがいまいち理解出来ないけど」

ロ 「それは いつものことだ」

フ 「まぁ サラシャがそう言うんならいっか」

ロ 「(お前もほとほと単純だな…)」

タ 「審判さん。 武器の使用は認めるってことは 魔法も可ということかしら?」

ヒ 「機械の使用もいいってことかな?」

イ 「イエス。 思う存分 やっちゃって下さい」

リ 「なるほど。 ビーチバレーなんか かったるいと思ったが
   それなら意外に楽しめそうだな。」

ロ 「魔法に機械…。 やっかいな試合になりそうだな」

リ 「なんだロクス。 怖気づいてんのか?」

ロ 「ふっ 笑わせるな。 優勝するのはラブチュ王国だということを忘れるな」

リ 「そっちこそ お前のチームにはお荷物しかいないってことを忘れてんじゃねぇの?」

ロ 「なっ…! (反論出来ない。涙)」



あーあ。 何だか試合前からバトル勃発って感じだね。

時間も押してることだし 無駄口はそれくらいにしてもらって さっさと試合を始めるよ。

本来ならここで 時間が押してるのは“おみくじ”のせいだって ツッコミが入るんだろうけど

ボクがナレーションをしてる限り あっさり流す方向で行くに決まってるだろ。



イ 「では ちゃっちゃと始めようか。 3点先取したほうが勝ちだから 適当に頑張りたまえ」



◆ 第一試合 ラブチュ王国 VS チキン王国 ◆

ロ 「言っておくが 手加減はしない」

ヒ 「望むところさ」

レ 「こっちも全力でやらせてもらうからな」

マ 「覚悟してなさいよ サラシャ」

サ 「そっちこそ。 主人公チームに当たったことを後悔するがいいわ」

フ 「だよな! どんな窮地になっても 結局最後は主人公チームが勝つってのが筋だよな」



一人だけ へタレた発言をした奴がいるね。

見るからに足を引っ張りそうな奴がさぁ。 



サ 「それじゃ サーブいっきます!」

フ 「おぅ! いったれ!」

ロ 「(何となく嫌な予感がするのは 俺の気のせいか…?)」

サ 「とりゃ〜!」

マ 「そんなへなちょこサーブで 私達を倒せるつもり?」

サ 「フッ。 そのボール… 消えるよ?」

マ 「は? 何言ってるの? すっごい見えまくりだけど」



マオン姫がレシーブしたボールを ヒヨ王子がトスを上げ

レヴのアタックが見事に決まった。 なかなかやるなぁ。

どうやら ラブチュ王国の皆さんは サラシャ姫のお馬鹿なサーブに

呆気にとられ一歩も動けなかったみたいだ。



サ 「おっかしいなぁ。 何で消えなかったの!?」

ロ・フ 「消えるかっ―!!」

サ 「何よぅ。 消えるはずなんだもの!」

ロ 「いいか。 念のため言っておくが “ツバメ返し”に“羆落し”も禁止だ」

サ 「えぇー! 何で!?」

ロ 「何でも何も…。 個人的趣味に走りすぎるな。 わかったな?」

フ 「つーか あっさり一点取られたじゃん。
   たまにはロクスの言うことを 素直に聞いておけって」

サ 「フジールまで。・・・・ちっ」



舌打ちとは なかなかやるね。 あのお姫さん。



マ 「それじゃ 次。 こっちからサーブ行くわよ。 てぇい!」



こっちのお姫さんも 回し蹴りでサーブとは。 侮れないな。



ロ 「来たぞ! 取れ フジール」

フ 「おっけー。 任せとけ…って、うわわ!!」



はりきり過ぎたせいか 砂に足を取られちゃってるよ。

あ…。 でも 転んだ拍子に顔面でレシーブしたっぽい。 こりゃ石崎も驚くね。



ロ 「よし 上出来だ! サラシャ アタック準備に入るんだ」

サ 「いつでも こーい!」

ヒ 「サラシャをマークするんだ」

レ 「お姫様といえど そう簡単に決めさせないぜ!」

ロ 「・・・ふっ。 悪いが決めさせてもらう」



護衛隊長さん あれ? お世話係りだっけ?

ま、どっちでもいいや。 ボクには関係ないし。

サラシャ姫をフェイクにして 直々にアタックを決めたのは流石とでも言っておこうか。



マ 「くっそ〜! ロクスにしてやられたわ」

ヒ 「まんまと作戦にひかかってしまったね」

レ 「ドンマイ ドンマイ。 次 決めてこーぜ」

サ 「ちょっと ロクス!」

ロ 「何だ? これで同点だぞ」(ご満悦気味)

サ 「何だじゃないわよぅ。 今 嘘をついたわね。
   姫に嘘をつくなんて 護衛隊長の心得に反しているわよ!」



なんだ なんだ? 仲間割れか? 面白くなってきたぞ。



ロ 「敵を欺くには まず味方から… と よく言うだろう」

フ 「とかなんとか言って 自分だけ目立とうとしてんじゃないだろうーなー!」



いや。 キミも立派に目立ってたよ? それよりも 頭の砂を払い落としたらどうだい?



ロ 「だったらお前も 転んでいないで 少しは活躍してみせたらどうだ?」

フ 「言われなくたって 次はこの俺が決めてやるっての!」

ヒ 「というか…。 早くサーブ打ってくれないかな?」



あぁ。 そうだね。 ボクも傍観してる場合じゃなかった。



イ 「ピピー。 ラブチュ王国チーム。 あと3秒以内にサーブを打つように」

フ 「じゃ、次俺がサーブするからな」

ロ 「好きにしろ」



おっ! あのへなちょこクン。 すごいジャンプ力じゃないか。

ん? 何かボールに小細工が…。 もしや 画鋲か!? 画鋲を貼り付けたのか!?



フ 「何でもありルールだからな。 どうなったってしらねーぞー! どらぁ!」

レ 「こしゃくな真似を。 マオン姫 ここは俺に任せておけ。 パイルダーオン!」



どこか聞き覚えのあるような掛け声とともに レヴがはめていた腕輪が

鉄鋼の小手になり しっかり腕がガードされてる。

これで 画鋲なんてないさ 画鋲なんて嘘さ 寝ぼけた人が見間違えたのさ〜♪

レヴがしっかりレシーブすると その勢いで仕込まれていた画鋲は弾けとんだ。

へなちょこくんの作戦は無残にも散ってしまった。



ヒ 「いいぞ レヴ。 じゃあ僕も少し本気を出させてもらおうかな。 パーチャック!」



またへんなかけ声と共に ヒヨ王子がいかにも怪しい手袋を装着したぞ。

どんな効果を発動するのかワクワクするなぁ。



マ 「それっ。 ヒヨ 任せたわよっ!」

ヒ 「了解。 任されたっ!」



ヒヨ王子のスパイクは サラシャ姫へ向かって一直線。

さぁ、取れるかな? お姫さん?



サ 「フフ。絶好の羆落しチャンスだわ…」

ロ 「だから やるなって言っただろう! 普通にレシーブするんだ。
   どんな仕掛けがあるかわからない。 油断せずに取るんだ!」

サ 「ちっ。 しょうがないなぁ…。 って、うひゃぁ〜!!」



まともに受けたようだけど 何か様子が変だ。

ボールは跳ねずに サラシャ姫ごと ぶっ飛んでしまった。



ヒ 「これは手袋に見えて 実は重力変換装置。
   今打ったボールは30倍の重さになってるハズだよ」

フ 「だ、大丈夫か サラシャ!?」

サ 「いったいじゃないのよぅ! もう 怒った!
   そっちがその気なら 私も本気で行くんだから!」

ロ 「(最初から本気を出してくれ…泣)」



さて これで2対1。 ラブチュ王国はどう反撃するかな?



レ 「あと一点で 俺達の勝ちだな」

マ 「楽勝楽勝♪」

ヒ 「それじゃ 最後は僕のサーブで… はじけてまざれー!」

サ 「な、何!? まぶすぃー!」

マ 「ナイス ヒヨ! サラシャの目をくらましたわ」

レ 「けど 念には念を押して ロクスの動きを止めておくか」



レヴが機関銃のようなものを取り出すと レーザー光線をロクスに向けてぶっ放した。

いい感じだ! 武器の使用を認めたんだから これぐらいやってもらわないと。



ロ 「俺を甘く見るなよ」

ヒ 「うわぁ!」



レヴが放ったレーザー光線を なんと剣で受け止めた。

しかも 反射させた光線でヒヨ王子を返り討ちだ!

それで ボールの行方は・・・?



サ 「なにくそー! ふんふんふんふんふんふんふん!!」



あー、そんなことしてると どあほぅって言われるよ?

目をやられちゃったサラシャ姫が かたっぱしから腕をあっちこっち伸ばすと

偶然にもレシーブ出来たようだ。 そのボールは天高く舞い上がり

そこへ走りこんでくるのは… あいつだ!



フ 「今日一番の見せ場!」



フジールは 回転しながらハイジャンプをすると そのまま体勢を上下反転させた。

これは まさか!?



フ 「喰らえっ! FF仕込みのジェクトシュート!」



やっぱりそうきたか。

ま、簡単に説明するとオーバーヘッドキックのようなものだけど。

フジールが打った 否 蹴ったボールはそのまま砂にめり込んだ。



イ 「ピピー! 3対1でチキン王国の勝ち」

フ 「えぇ!? 何でだよ? 今 かっこよく決まっただろ!」

イ 「いや よくご覧よ。 確かに凄かったけどさ 相手コートに入らなきゃ意味ないだろ?
   残念ながら ボールはコート外にめり込んじゃってるから」

ロ 「全くだ…。 せっかくのチャンスを」

フ 「ううっ……。(涙)」

サ 「もう フジールのぉ馬鹿! 最新ネタを出す前に負けちゃったじゃないの」

ロ 「(アレ以上 何を出すつもりだったんだ。汗)」



マ 「ちょろいちょろい♪ このまま優勝も頂きね」

レ 「だな。 今の試合はほんの肩慣らしって言ったところだし」

ヒ 「うん。 まだまだだね」



おそらくサラシャ姫が言いたかったセリフを

ヒヨ王子がさっくり言ったところで 次回に続きます。

それにしても やけに長い番外編だなぁ。







 


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