〜 青の輝勇石 〜



次の日 朝から盛大に魔術大会が催された。

ゲストとして紹介されたサラシャ達には

豪華な食事が並べられた(フルーツ付き)特等席が用意されていた。


美味しそうにご馳走を食べているサラシャに

まさか本当にテーブルマナーが役に立つとは・・・と思うロクス。


隣では パッピ長が魔術大会の様子をいろいろと説明してくれている。

フジールはその度に 感心したり 驚いたり 脅えたりで 

魔術大会に出場している者達より忙しそうだった。



「実際に自分の目で見ることほど 勉強になることはない。サラシャ、よく見ておくんだ。」

「うん。本を読むよりずっと楽しいしね♪」



都一の魔法使いを決めるこの大会。

1対1の勝ち抜き戦で行われる真剣勝負は ハラハラしたりドキドキしたり

そして正々堂々としたその姿は 見ていてとても気持ちのいいものだった。



日が落ちるまで続いたこの大会で 優勝をおさめたのは

あの杜の番人 タトゥミだった。



「ほぅ、さすがだな。」

「やるね〜! あのお姉さん。それにスタイルもなかなか・・・」

「フジール 鼻の下伸びてるわよ。」

「イテテテっ、 ほりゃ、ひょうひょうひきがはしはりゅ。」
               (ホラ 表彰式が始まる)



サラシャに頬をつねられたまま フジールは武舞台を指差した。







「見事だった、タトゥミ。 優勝者には何か一つ褒美を取らす決まりだ。
 何がいい? 何か希望はあるか?」

「ありがとうございます。パッピ長。もしも 叶うのならば・・・
 あそこにいるサラシャ姫と この武舞台で闘ってみたいです。
 その許可をもらえませんか?」



そう言ってタトゥミは 指をさしサラシャを見た。



「えっ!? わ、私と?」



サラシャは驚き目をパチクリさせる。



「もしアタクシに勝ったら 貴方達が探している輝勇石のありかを教えてあげるわ。
 どう? サラシャ姫。」

「しかし タトゥミ。それは無謀とも言える闘いに・・・」

「いいんです、パッピ長。 私、やります!」



パッピ長が止めようとしたのも聞かずに サラシャは武舞台に上った。



「そうこなくっちゃね。」

「で、でもサラシャ姫。 もしものことがあったら・・・」

「いいったらいいのー! パッピ長は黙ってって!\(>◇<)/」



なんか良くわからない勢いに押されて パッピ長は後ずさり武舞台を降りた。

特等席では 心配でならないフジールが騒ぎ出す。



「サラシャ、本気かよ!? 止めなくていいのかロクス?」

「サラシャがやると言っているんだ。止めても無駄だろう。」

「何、落ち着いてんだよ!? サラシャが真っ黒焦げになったらどぅすんだって!」

「じゃあ、代わりにフジールが闘うか?」

「無理無理無理無理!!!」

「まぁ、黙って見ていろ。」





武舞台に立つ サラシャとタトゥミ。

二人の視線が火花を散らした。



「闘うからには本気で行かせてもらうわよ?」

「うん。でも、私が勝ったらちゃんと約束は守ってよね。」



アタクシに勝つ気でいるの?

悪いけど 手加減はしないわ。

貴方の覚悟とやらを アタクシのこの目で確かめさせてもらうわよ。



「では、始めッ!!」



パッピ長の声がかかると同時にタトゥミが すぐさま仕掛けた。



フレイム!

「うひゃぁ!」



とりあえず サラシャは逃げる。

次々と放たれる魔法から 逃げて また逃げて そしてまた逃げて

逃げて逃げて逃げまくる。



「いつまで逃げるつもり? そのうち体力が持たなくなるわよ?」



タトゥミの言うとおり 逃げてばかりでは勝負にならない。

体力がつきて まともに魔法を喰らうのがおちだ。

そうこうしているうちに サラシャの息が上がってきた。



「ハァハァ・・・ やっばいわぁ。
 どうにかしてあの魔法を封じなきゃ。 魔法を放つ指さえ捕らえることが出来たら・・・
 遠距離じゃ無理 接近戦に持ち込まなきゃ。」

「ほら、お姫様。足が止まってるわよ?」



その瞬間 炎がサラシャを襲った。



「うわぁぁ〜! まともに喰らったぞ! どーすんだよ、ロクス!!
 サラシャが焦げちまう〜! ガングロになっちまう〜!!」



炎に包まれたサラシャを見て フジールは焦りまくって

ロクスの首を掴んでぶんぶん振った。



「くっ く・・ る・・い・・ は・・な・・・」

「あぁ!? 何言ってんだよ ロクスってばよー!!
 サラシャがぁ サラシャがー こんがりトーストになっちまう!!」



取り乱してるフジールは半泣き状態で なおもロクスの首をガンガン振り続けた。



「はな・・・せ・・ くっ!!
 離せっていってるだろうがッ!!!



ドカッ!



あまりにも苦しかったので ロクスはちょっと本気でフジールに一撃を喰らわした。

その一撃で 正気に戻ったフジール。



「なんだよ、ロクス! サラシャが炭火焼になってもいいのか!?」

「よく見てみろ。 王族の衣服は耐熱性に優れた布を用いている。
 多少は焦げても 炭火焼まではならないはずだ。」



そう言われて サラシャを見ると ロクスの言う通り

ダメージを受けながらも 炎を振り払うサラシャがいた。



「うぅ。。。 サラシャ、無事だったんだな。(滝泣)」

「泣くな みっともない。ちゃんと見ていてやれ。」



フジールがハンカチ片手に見守る中 二人の闘いはまだ続いていた。



「おあいにく様。この服に炎は利かないのよぅ。」

「そうらしいわね。 でも、かなりのダメージはあったはずよ。
 そろそろ降参したら? これ以上喰らえば これからの旅に支障が出るんじゃなくって?」

「降参なんてしない。別に私はどうなってもいいんだもの。
 輝勇石と持つべき人さえいてくれたら 世界は救われるんだもの。
 だから・・・ ここで負けるわけにはいかない。
 どんなになったって 輝勇石のありかを教えてもらうんだから!」

「どんなになったって? じゃあここで死んでも後悔しないわね?」

「ふしゅ〜・・・」



サラシャが左右に揺れだした。どうやら本気モードに入ったらすぃ。



「構わないっていってるでしょー! 攻めあるのみぃいいい!!」



サラシャは構えるタトゥミに真正面から突っ込んでいった。



「すきだらけよ、サラシャ姫! 絶対零度を味合うがいいわ!!」

「必殺――!! 袈裟固め!!」

「け、袈裟!?」



タトゥミが一瞬ひるんだすきに サラシャが腕を取り寝技に持ち込んだ。



「うりゃ! まいったか?」



何の迷いもなく 正面からぶつかってきたサラシャに タトゥミは本物の覚悟を見た。

自分の命などかえりみず 輝勇石を 世界の平和を求めてる思いが伝わってきた。

アタクシの負けだわ・・・



「・・・降参よ。」

「本当? 私の勝ち?」

「えぇ。お見事だわ。」



サラシャが腕を解くと タトゥミは手を差し出した。

サラシャがその手を取り 二人が固い握手を交わすと 武舞台は拍手と歓声に包まれた。



「じゃあ、約束通り輝勇石のありかを。」

「その前に ちょっといいかしら。」



そう言ってタトゥミは 強い眼差しでパッピ長を見る。



「パッピ長。」

「タトゥミ、決心がついたようだな。」

「はい。アタクシはサラシャ姫達と共に旅に出ます。杜の都を 世界を救うために。」

「私たちと 旅に出る?それって・・・」

「そう。アタクシが青の輝勇石の伝承者よ。」



タトゥミが首から下げていたものを取り出すと 青く輝く石をサラシャに見せた。



「輝勇石・・・だ。 一緒に来てくれるの?」

「もちろん♪ 」



杜で会った時とは違った優しい笑みを浮かべるタトゥミにサラシャは飛びついた。



「ありがと! これからよろしくね、タトゥミ!!」

「こちらこそ。」



サラシャを包むタトゥミに よりいっそう大きな拍手が沸いた。

拍手と歓声の中 ロクスとフジールも二人を称え武舞台へと降り立った。

そしてサラシャは 笑顔で二人に駆け寄る。



「やったよ ロクス!」

「あぁ。良く頑張ったな サラシャ。」



改めてサラシャの覚悟を確認したロクスは 満足げなサラシャの頭をポンポンと撫でてやった。



「うぐっ、うぐっ・・・
 サラシャー すっげー心配した! でも、かっこよかったぞぉ!!」



涙まみれで 後ろからサラシャに抱きつくフジール。



「うん。心配かけてごめんね。 ありがとう フジール。」



サラシャは 回された手をそっと握り フジールの腕の中で静かに微笑んだ。







    


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