適当だと思われたサラシャの野生の勘は見事当たったらしく
前方に魔物に襲われている少女の姿が見えた。
サラシャ達が見たものは
真っ黒な魔物が 今まさに少女
の命を奪おうとしている瞬間だった。
「いた! ロクス、早く助けてあげて!!」
「ダメだ! 間に合わん!!」
姿を確認できても まだ距離がある。
このまま全力で走ったとしても助けることは不可能だと
悔しながらに唇を噛むと 二人の後方からタトゥミが叫んだ。
「どいてロクス! そしてサラシャ、スカートを押さえなさい!」
「ほ、ほえっ!?」
「ウインド!」
タトゥミが魔法を唱えると 風が巻き起こり魔物を軽く遥か彼方まで吹き飛ばした。
「きゃはは マドンナみたいになった! スカートがフワワァって♪」
「だから押さえろと言ったのか・・・」
「それよりもサラシャ。」
「あ、そだった。楽しんでる場合じゃなかったわ。」
ふぁさふぁさとスカートを整えて サラシャは少女のそばに駆け寄った。
「大丈夫だった?立てる?」
「はい。なんとか・・・ ハゥ!!Σ( ̄∀ ̄°) 」
「ケガしてるじゃないのよぅ。 見せて、治してあげるから。」
そう言うとサラシャは 足を抱えた少女の手をのけて自分の手をかざした。
その様子を不思議に思ったタトゥミがロクスに問う。
「治すって?」
「サラシャは治癒能力を身に付けている。」
「それは驚きだわ。治癒能力なんてそうそう身に付くものじゃないわよ。」
「あぁ・・・。まぁ、いろいろとあったんだ・・・。」
遠く昔を思い出すように言うロクス。
タトゥミが驚き見てる中で サラシャは少女のケガを治した。
「良かった酷い怪我じゃなくって。これなら傷跡も残らないはずだよ♪」
「ありがとうございます。」
「ところであなたは? こんなところで何をしてたの?」
「私はプーニといいます。この先にある村に住んでいるんですが
ふらりと散歩に出かけたら いきなりあの魔物が。 グスッ」
よほど怖かったのかプーニは先ほどのコトを思い出して目に涙を浮かべた。
そのプーニに今度はタトゥミが質問を投げかけた。
「ねぇ、プーニちゃん。さっきの魔物 よく現れるの?」
「はい 最近になってチラリホラリと。 この間も 村が魔物に襲われて・・・」
そこまで言うとプーニは顔を覆いまた泣きだした。
サラシャとフジールがプーニの傍に寄り なぐさめの言葉をかける。
しばらくはそっとしておいたほうが良いと思い タトゥミはそれ以上何も聞かなかった。
口を閉ざしたタトゥミに今度はロクスが話しかけた。
「初めて見る魔物だったが タトゥミは何か知っているか?」
「あの耐え難い醜さ。おそらくトン・ソォークの手下だと思うわ。」
「トン・ソォークの!? こんな所まで手が広がっているのか!?」
「えぇ。信じたくはないけど・・・」
「事態は思ったより早く進行しているようだな。急がなければ。」
まだ輝勇石も揃っていないというのに
確実にトン・ソォークの魔の手は伸びてきている。
残りの輝勇石を早く見つけなければ・・・
一人考え込むロクスにサラシャとフジールが駆け寄ってきた。
「ロクス、タトゥミ。プーニちゃんを村まで送ってあげよう!」
「お礼に晩飯をご馳走してくれるってよ!」
なぐさめてると思いきや 知らない間にそんな話になっていたらすぃ。
「送るのはいいが 晩飯までご馳走になってる暇はない。
それにお礼といってもフジールは何もしていないだろう!」
「それを言うならロクスだって・・・(ぼそっ)」
「なっ!? 仕方ないだろう!
それに俺は晩飯はご馳走にならないって言ってるだろーが!」
「だめだぞ ロクス。人の好意はありがたく受けないと。( ̄^ ̄)えっへん。」
「おまえは遠慮がなさすぎだ! サラシャも何か言ってやれ・・・って、いないし!!」
ロクスが振り返ると サラシャとタトゥミはプーニを連れてすでに歩き出していた。
また始まったわね。 あの二人はほっといていいから先に行こう。 などと言いながら。
* ここからは会話オンリーで *
村に着いて プーニが用意してくれた夕食を囲う4人。
フ 「あれ? ロクス、晩飯はご馳走にならないんじゃなかったっけ?」
ロ 「うるさいフジール。 黙って食え。」
サ 「もぅ 二人ともやめなよね。食事は楽しくいただくものよぅ!!」
サラシャの一言で大人しくなる二人。
ロ 「そう言えばプーニ。この間村が魔物に襲われたと言っていたが
それらしき痕跡は見えないな。」
プ 「はい、旅の剣士さんが魔物を退治してくれたので小さな被害だけすんだのです。
そのおかげで村の復興も早く出来たし。」
ロ 「旅の剣士?」
プ 「トン・ソォークを倒す為に旅をしていると言ってましたけど。」
サ 「トン・ソォークですって!? 私たちの他にもそんな人が?」
プ 「えっ? あなた達もそうなんですか!!」
サ 「うん。まずは輝勇石を集めないといけないんだけど。」
プ 「輝勇石・・・?」
タ 「コレのことよ。」
タトゥミは輝勇石を取り出してプーニに見せた。
プ 「あっ、コレは!」
ロ 「何だ? 見たことがあるのか?」
プ 「さっき言った旅の剣士さんも同じ石を持っていたような。色は違うけど。」
サ 「それ、何色だった!? 輝いてた?」
プ 「確か赤く輝いてました。」
タ 「赤・・・ 闘志の輝勇石だわ。」
サ 「輝いてたってことは その人が輝勇石の持ち主ってことよね。」
ロ 「意外な場所で情報を得ることが出来たな。」
フ 「な? ご馳走になって正解だろ?」
ロ 「おまえは黙ってろ。 それで、その旅の剣士とやらは何処へ行くと?」
プ 「海を渡り 北の大陸へ行くと言ってましたけど。」
思わぬ場所で 輝勇石の情報を聞けて サラシャ達の次の目的地が決まった。
まずは港町へ行き 北の大陸へと渡る。
赤の輝勇石の持ち主とは一体どんな人物なのだろうか。
その日は夜も遅くなったので 出発は明日の朝にして
一晩プーニの家に泊めてもらうことにした。
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