2日かけてやっと港町に到着した4人。
港町は夜だというのに とても賑やかだった。
どうやら今日は月に一回行われるバザーの日らしい。
所狭しと露店が並んでおり 溢れんばかりの人々が道をふさぐ。
先頭を歩くロクスは 人の波をかき分けながら前に進んだ。
そしてすぐ後ろを歩くタトゥミに声を張り上げて話しかける。
そうでもしないと 声がかき消されてしまう。
それくらい港町は騒がしかった。
ロ 「よりによってこんな日に着くとは。」
タ 「でも人が多いほうがいろいろと情報が聞けるかも知れないわ。」
ロ 「それはそうだが。とにかく今日は早く宿をとって休ませてやりたい。」
タ 「同感。さすがのアタクシも疲れたわ。」
ロ 「サラシャ! はぐれないようにしっかり付いて来いよ!
こんな所で迷子になったら 面倒なことになるからな!わかったか?」
タ 「・・・・ロ、ロクス。」
ロ 「なんだ タトゥミ?」
タ 「ちょっと遅かったみたいよ。(汗)」
ロ 「は!?」
タ 「サラシャ・・・ すでにいないわ―!! おまけにフジールも!」
ロ 「な、何っ!?(汗)」
ロクスの振り向いた先には とうの昔にサラシャの姿はなかった。
周りを見回してもサラシャとフジールの姿はない。
俺としたことが・・・
ロクスの顔に不安の色がさす。
タ 「だ、大丈夫よ ロクス。そう遠く離れていないと思うわ。
手分けして二人を探しましょう。」
ロ 「いや。ここで俺たち二人がはぐれたら元も子もない。二人で探そう。
まずは ・・・アイス屋だ。」
タ 「アイス・・・!?」
そのサラシャはというと・・・・
最初はタトゥミのあとに続いて歩いていたが 初めて見るバザーに好奇心を奪われて
ふと目に入ったアイス屋さんへフラフラ〜と誘われるように入った。
サラシャの後ろを歩いていたフジールは それに気付きサラシャの後を追う。
フ 「おい! サラシャってば、何処行くんだよ?」
サ 「アイスが私を呼んでるの〜♪」
フ 「呼んでるの〜って、ロクスたち先に行ったぞ!」
サ 「今はロクスよりもアイスよぅ! ほら見て♪
バザー限定スペシャルハイパーMIX白鯨アイスだってvv フジールも食べる?」
フ 「俺は遠慮しとく・・・(なんか胡散臭い名前のアイスだし。鯨味なのか!?)
後でロクスに怒られても知らねーぞ。」
サ 「その時はその時よ♪ おじさん、アイス一つ下さいな♪ 山盛りでお願いねv」
アイス屋 「へぃ毎度! 今日はお嬢ちゃんで完売だ、ついてたねぇ!!」
キラキラと目を輝かせ嬉しそうにアイスを受け取るサラシャを見ると
代わりに俺が怒られてやるかと思うフジールであった。
アイスはサラシャの大好物だし そのへんあの堅物ロクスでもわかってくれんだろ。
サ 「じゃ、いっただきまぁす☆」
フ 「おぅ じっくり味わって食え食え♪」
サラシャが バザー限定スペシャルハイパーMIX白鯨アイスを口にしようとした時だった。
ドンッ! べチャ!
騒がしい団体がすれ違い様にサラシャとぶつかりアイスはサラシャの口に入ることなく
地面に落ちて踏み潰されてしまった。
サ 「あ・・・ 私のバザー限定スペシャルハイパーMIX白鯨アイスがぁ・・・」
サラシャの顔がみるみるうちに曇ってゆく。一寸先は闇。そんな感じ。
その団体はそんなことにはまったく気付かず そのまま立ち去ろうとしていた。
これにはフジールも我慢できなくて サラシャとぶつかった男の肩を掴む。
フ 「ちょっと待てよ! 何か一言あるだろ?」
男 「あぁ? 何だよてめぇ うぜぇな!」(町のごろつきキャラ)
フ 「何だよじゃねぇ! おまえのせいでアイス落としたんだぞ!おまけに踏んづけやがって!」
男 「はぁ? アイスくらいで何言ってんだ? また買えばいいだろ、馬鹿じゃね?」
フ 「買えないんだっての!
このバザー限定スペシャルなんとかアイスはもう売り切れたんだッ!」
男 「そんなの知ったこっちゃねぇ。てか、その女もぼけっとしてたんじゃねぇの?」
何を言ってもその男はまったく悪びれた様子を見せない。
そうこうしてるうちに その男の仲間がどうしたどうしたと集まってきた。
周りを歩く人々もなんだなんだと足を止め
いつの間にかフジール達は野次馬に囲まれてしまった。
フ 「と、とにかく謝れっ!」
男 「やなこった。」
男 「何 コイツ〜?生意気じゃんやっちまぅ?」
とうとう男たちが剣を取り出した。 危うしフジール!
そしてこちらはやっとこさアイス屋に到着したロクスとタトゥミ。
ロ 「何だ?アイス屋の前に人だかりが出来てるな。」
タ 「サラシャ達かしら・・・?」
ロ 「行ってみよう。」
人だかりの中を進むと 男たちがフジールに向かって剣を抜いたところだった。
フジールの後ろには泣きべそをかいているサラシャ。
そして 踏み潰されているアイス。
ロクスはなんとなく状況を把握した。
タ 「ちょっと、サラシャとフジールじゃないの!
何突っ立ってんのよロクス。助けなくていいの!?」
ロ 「まぁ、少し様子を見てみよう。アイツがどこまでやれるか見てみたい。」
タ 「でも相手は多数。それに剣まで持っているのよ。」
ロ 「いざとなれば俺が出る。 大丈夫だ。」
意外にも落ち着いているロクスに少し驚き タトゥミは言われるまま二人を見守っていた。
剣を向けられたフジールは 一瞬短剣に手をかけようしたがその手を止めた。
サ 「フジール。 もういいよ。」
フ 「何言ってんだよ サラシャ。 あんなに嬉しそうに食べようとしてたのに。
サラシャが良くても俺の気がおさまらないっての!」
サ 「でもさ・・・」
フ 「大丈夫!俺がコテンパにやっつけて絶対謝らせてやる。(つもりだ!)」
サラシャという名前を耳にして男達が何かに気付いた。
男 「サラシャって もしかして・・・ ラブチュ王国の姫じゃないのか?」
男 「まさか!? 何でこんなところに?」
男 「じゃあ 姫と一緒にいるあいつは・・・」
脅えた様子でフジールを見る男たち。
ここでフジール ピカーンと名案が浮かぶ。
フ 「そうだ。 俺がぉ世話係りのロクスだ。俺でよければ相手になるが?」
ロクスと名乗るフジールにひるむ男たち。
それを見ていたロクス本人は吉本新喜劇並みにずっこけそうだった。
ロ 「何を言ってるんだあいつは。しかも肝心な所が間違っているじゃないか! 護衛隊長だッ!」
これには思わずタトゥミも笑いを漏らした。
しかしこれで引き下がると思った男たちは 野次馬の手前逃げることも出来ず
構わずフジールに突っ込んできた。
フ 「うがっ!(てっきりビビッて逃げると思ったのに予想外じゃんか!!)」
焦りながらも剣をかわすフジール。
身軽さだけは一級品らすぃ。
だけど相手は多数。 後ろを取られたフジールをかばうようにサラシャが飛び出した。
サ 「危ない フジール!」
そのままサラシャに剣が振り下ろされ もうダメかとタトゥミが目を覆った瞬間。
ガキンッ!!
剣と剣が 混じり合う音が響き
次に緊張で静まり返った空気を いつもより低めのロクスの声が切り裂いた・・・
ロ 「そこまでにしてもらおうか。」
間一髪のところで剣は止まり 代わりに男の喉元へと剣が突きつけられる。
男 「だっ、誰だてめぇ!?(汗)」
ロ 「ただの街人 フジールでーす。(棒読み)」
フ 「(ロ、ロクス!! 汗)」
ロクスはそう言って呆れ果てた視線をフジールに向けた。
突然のロクスの登場で危険から逃れ助かったものの
その視線に フジールの額に嫌な汗がつたう。
ロ 「ま、説教は後にして・・・
まずはこっちをかたづけないとな。」
男 「かたづけるだと? ただの街人が何を抜かしやがる!!」
ロクスの言葉に逆上した町のごろつき達は一斉にロクスに斬りかかった。
しかしロクスはいとも簡単にその男たちの剣をはじき飛ばした。
そしてサラシャに斬りかかった男の鼻先に剣をあてがった。
ロ 「姫に剣を向けることは第一級の犯罪に値する。
王国へ連行してそれなりの処罰を受けてもうことになるな。
今すぐここから立ち去れば今回だけは見逃してやらなくもないが・・・。どうする?」
鋭い目で町のごろつきをにらみ付けるロクス。
その威圧感だけで町のごろつき達に十分に恐怖を与え
男たちはすいませんでしたーと逃げるようにその場から立ち去って行った。
ロ 「大丈夫だったか サラシャ?」
ロクスが振り返るとサラシャはタトゥミに支えられ返事もせずにぼぉーとしていた。
タ 「だめよ、ロクス。相当ショックが大きかったみたいだわ。
だからアタクシが早く助けなきゃと言ったのに!」
ロ 「あぁ そうみたいだな。」
タ 「そうみたいだなって! 何落ち着いてるのよ。
サラシャが抜け殻みたいになってるというのに!」
ロ 「サラシャ・・・ アイスなら明日買ってやる。」
サ 「・・・・二個」
ロ 「ま、いいだろう。 (俺の不注意でもあるしな)」
サ 「やったぁ♪ 言ってみるものね♪」
タ 「(・・・アイス中心。汗)」
フ 「良かったな サラシャ。」
ロ 「フジール。」
フ 「は・は・は・はいッ! 何でしょうロクス隊長!」
ロ 「いろいろと聞きたいことがあるんだが。」
フ 「はい、なんなりとどうぞ!」
ロ 「まず なぜあの時短剣を抜かなかった?
短剣を使えばあれくらいの相手 お前でもどうにかなっただろう?」
フ 「あ〜、それは あんな奴らにロクスがくれた短剣を使いたくなかったからさ。」
ロ 「(こ、こいつ・・・)
そうか。まぁ他にも聞きたいことはあるが今回は大目に見てやる。」
表情には出さなかったが どうやらロクスは嬉しかったらすぃ。
柄にも無く照れたようだ。( ̄m ̄〃)
そんなこんなで 旅の疲れに一騒ぎの疲れが重なった一行は
今までに無く 宿でゆっくりと休養をとった。
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