翌日 海を渡るために定期船が出ている桟橋へと向かう。
ロ 「こうも見られていると 歩き辛いものがあるな。」
タ 「なんだか 落ち着かないわね。」
フ 「そっかな? 注目されて有名人みたいで嬉しいじゃん♪」
ロ 「有名なのはおまえではなくて サラシャだ。」
昨日の騒ぎがあって らぶチュ王国のぉ姫様が旅をしていることが
一晩で瞬く間に港町中に広まったようだ。
そのおかげで どこを歩いても4人は注目の的となっていた。
サラシャ本人は視線を浴びても全く気にしてない様子だが
ロクスは顔が知れわたると言う事は 同時に危険を伴う可能性もあると
いつもよりも注意深く周りに気を配る。
そんな苦労も知らずサラシャは 時折近づいて握手を求めてくる子供に
ぉ姫様らしく優しく子供の手をとり「大きくなれよぅ!」と笑顔で応えていた。
最後の最後でぉ姫様らしくないのが サラシャらしいと言えばらしいのだが・・・
桟橋への途中 アイス屋を見つけたサラシャはロクスの袖をひっぱり走りこんだ。
サ 「すいませーん。アイス3個下さいな♪」
ロ 「2個じゃなかったのか?」
サ 「いいじゃない。2個も3個も変わらないでしょ? なんだったら5個でもいいけど?」
ロ 「だそうだ。 というわけで 3個大盛りで頼む。」
アイス屋 「毎度あり! って、ぉ姫様!?
うちのアイスじゃ ぉ姫様のお口に合うかどうか・・・」
サ 「アイスは万国共通おいしいものよ。その土地の風味を味わうのも楽しいし♪」
アイス屋 「左様で御座いますね。」
サラシャは満足げにアイスを受け取ると フジールのほうを振り返った。
サ 「フジール。 今日は変なごろつきいないよね?」
フ 「ん? 右よーし、左よーし! OK、大丈夫!」
サ 「じゃあ 今日こそ本当にいっただきまーす☆」
3個ものアイスを どうやって持って食べるのか謎だけど
嬉しそうにアイスを頬張るサラシャを見てると そんな小さなことは気にもならなかった。
タ 「ねぇ フジール。 サラシャってアイスに目がないのね。」
フ 「うん。サラシャのアイス好きはすごいって。
もう好きとかのレベルを超えてるよな あれは。
アイスだけに愛す・・・なんてー! ぷはは♪」
タ 「(フ、フジール・・・ 激しくさむくってよ。 汗)」
フ 「てか 俺よりアイスのほうが好きだったらどーしよー!(泣)」
タ 「(いや アタクシに泣きつかれても。 汗)」
そんなフジールを少々不憫に思うタトゥミであった。
桟橋に着くと 何隻かの船が停泊していた。
しかし そのわりには全くと言っていいほど人の姿はなかった。
サ 「港って もっと人がいると思ったんだけど。」
ロ 「妙だな。」
タ 「定期船がでているのよね?」
フ 「あ! あそこのおっさんに聞いてみようぜ。」
少し小さめの船の手入れをしている老人。
おそらく漁師なのだろう。
その船の中には綺麗に手入れされた網や銛が積まれていた。
フ 「なぁなぁ おっさん。 ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
老人 「なんでっしゃろ?」
フ 「俺たち向こうの大陸に渡りたいんだけど 定期船ってどこかな?」
老人 「この海を渡るじゃと? 残念だがそれは無理な話じゃ。」
ロ 「どういうことだ?」
老人 「この間から 海賊が海を荒らすようになったんじゃ。
それに加えて魔物もでるとなっちゃ 定期船どころか漁に出る者すらいなくなった。
今 海に出るということは命を捨てるようなもんじゃよ。」
サ 「そう・・・なんだ・・・」
困難な旅になるとわかっていたとはいえ
またしても 壁にぶちあたってしまった。
海を渡るには船を使わなくてはならない。
しかし その船が出ていないとなれば どうやって海を渡ればいいというのか。
漁師のご老人にお礼を言って 海沿いを歩く4人。
フ 「んー・・・ 泳いでってわけにはいかねぇもんな。」
サ 「当たりまえでしょ。水着だって持っていないのよ!」
ロ 「 (持っていたら 泳ぐのか!?) 」
タ 「だけど 困ったわね。」
フ 「さっきのおっさんに船を借りるか?」
サ 「それはダメ!
あのご老人 漁に出れないとわかっていながら船の手入れをしてた。
あの船は大切な生活の一部なんだよ。それを借りるなんてこと・・・」
ロ 「あぁ そうだな。他の手を考えよう。」
何か良い方法はないものかと 黙り込みそれぞれが考えていると
沖のほうから人の声が聞こえてきた。
何事かと思って見ると 珍しい型の船が海賊船に襲われていた。
フ 「うわっ! なんかヤバくない?」
タ 「あのままじゃ沈没するわ!」
サ 「ロクス 助けてあげて!」
ロ 「危険を承知で海へ出たんだろう。助けても意味がない。ほおっておけ。」
サ 「何 冷たいこと言ってんのよぅ! お願いだから!」
サラシャの強く訴える眼差しに ロクスは長いため息を吐く。
毎回毎回 助けてあげてと言うが 一体俺を誰の護衛隊長だと思ってるんだか。
ロ 「しゃーないな・・・。タトゥミ、俺をどうにかしてあの船まで運べないか?」
タ 「えっ!? 出来ないことはないけど。ちょっと待って。」
そう言うとタトゥミは 辺りをキョロキョロ見回し
昨夜のバザーで使われてたと思われる 手ごろな絨毯を手に取った。
タ 「この大きさなら大丈夫よね。」
フ 「大丈夫って、その絨毯でどうすんの?」
タ 「どうするってこれで飛ぶのよ。さぁ コレに乗ってロクス。」
ロ 「わかった。 フジール、お前も来い。」
フ 「え、いや。ちょっと待った! 飛ぶって、アラジンじゃあるまいし・・・。
それに相手は海賊だぞ! ゴムゴムとかメラメラがいたらどーすんだよ!
おまけに闘うコックさんなんかいた日には サラシャが寝返る可能性大だぞっ!」
ロ 「それなら大丈夫だ。眉毛がクリンとなってないと意味ないからな。(謎)
まぁ、いいから乗れと言ってるんだ。」
ロクスは嫌がるフジールの首根っこを掴み 無理やり絨毯の上に乗せた。
サ 「大丈夫よ、フジール。 ロクスが一緒だし。
それに 怪我をしても私がちゃんと治してあげるから。」
フ 「怪我ですまなかったら どーすんだよー。」
サ 「その時はその時よ♪」
フ 「・・・・(涙)」
タ 「二人も飛ばすのは初めてだから魔力の加減が出来ないけど
バランスだけは自分たちで取ってね。」
ロ 「お手やわらかに。」
タ 「それじゃあ 飛ばすわよ・・・。」
タトゥミが集中して魔力を絨毯に注ぐと ロクスとフジールを乗せた絨毯が
ふわふわと地面から浮き始めた。
フ 「おぉ! う、浮い・・・たーすーけーてーっー・・・」
浮いたと思った次の瞬間 絨毯はものすごい勢いで船を目掛けて飛んで行き
フジールの 驚きから恐怖へと変わった声が虚しく消えていった。
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