〜 灰色の海 〜



バビュ―――ン!!

サラシャは 小さくなっていく二人を手をかざして目で追った。



サ 「すんごい勢いで飛んでっちゃったね。」

タ 「少し魔力が入りすぎたかしら?」

サ 「いいんじゃない。早いにこしたことはないもの♪
   で、 あの絨毯はどうやって止まるの?」

タ 「・・・・ (汗)」

サ 「タトゥミ?」

タ 「潮風が気持ちいいわね。」

サ 「・・・・(止まらないんだ 汗)」



サラシャとタトゥミは小さくなった二人の姿を

まぁ 適当になんとかなるでしょと思いながら見守った。







フ 「速すぎだってこれー!!」

ロ 「振り落とされるなよ。」



目を開けていられないくらいの速さで飛ぶ絨毯は

水しぶきを上げる勢いで まっすぐ船に向かって飛んでいく。



ロ 「もうそろそろ着くぞ。」

フ 「てか これ止まる気配ないんだけど!(汗)」

ロ 「そう・・・らしいな。」



船を目の前にしても絨毯のスピードは落ちることなく そのまま船のマストへ一直線。



ロ 「今だ! 飛び降りろフジール!」

フ 「げっ? うそ、まじ!? だから嫌だって言ったんだぁー!!」



ロクスの合図で 二人して甲板に飛び降りると

乗り主を無くした絨毯は ベシャーンとマストに直撃しヘナヘナと舞い落ちた。



フ 「激危なかったじゃんかッ! タトゥミのやつ〜、俺を殺す気かっ!(泣叫)」



身軽じゃなかったら あのまま絨毯と共にペチャンコになって絶対ここで死んでた!

ヘボキャラながらも 身軽設定で良かったとフジールは心からそう思った。



ロ 「泣き叫んでいる暇などないぞ フジール。」

フ 「うおっ! そうだった! ここは戦場だ!!
   よしっ 行けロクス。 後方支援は俺に任せとけっ!」



そう言って マストの影に身を隠すフジール。



ロ 「あのな・・・(呆)
   まったく。 自分の身は自分で守れよ。」



そう言い放つとロクスは 剣を抜いて海賊たちに向かって構えた。

瞬時にして 海賊の数 武器 状況を把握する。

ざっと15人といったところか。

サーベルにフランベルジェ。たいした武器ではないな。

それにしても この船・・・



ロ 「おまえがこの船の持ち主か?」



暴れる海賊を斬り倒しながら 一人応戦している者に声をかけた。



? 「ああ そうだけど。 あんたは? どうやってここへ!?」

ロ 「我侭なぉ姫様の頼みでな。 勝手ながら参戦させていただく。」

? 「何処の誰だか知らないけど それはありがたい!」



飛びかかってくる海賊たちを 次から次へと海へ叩き落とし

ロクス達が勝利を目前とした時だった。



フ 「やべぇよ ロクス! あいつら大砲の準備をしてやがる!」



投げ込まれてくる手榴弾を ポイポイと海に捨てながらフジールが言った。



ロ 「なんだと!? (てか、お前役にたっていたのか。)」

? 「今からじゃ逃げ切れないッ!」

フ 「こうなったら・・・ 一・球・入・魂ー!!



フジールは 手にした最後の手榴弾を大砲に向かって投げ込んだ。



ヒュ〜ン ポス コロコロコロ



ドカ―――ン!





フジールの投げた手榴弾は見事大砲の中へ。

そして 大爆発を起こし海賊船は無残な姿で海へ沈んでいった。



ロ 「 (ありえないだろう 汗)」

フ 「おっしゃー! 見たかロクス。これが俺の実力だ♪」

ロ 「ま、まぁ お前にしては上出来だ。」

? 「ありがとう助かったよ。俺の名はレヴ。ところであんた達は?」

ロ 「俺の名はロクス。 そしてこいつはフジール。」

レ 「ロクス? なんか どっかで聞いたような名前だな・・・」

ロ 「それはいいとして さっきも思ったんだか この船にはレヴ一人しか乗ってないのか?」

レ 「あぁ。俺一人だよ。」

フ 「一人でこの海を渡ろうとしていたのか? 危険ってわかってて?」

レ 「俺の帰りを信じて待ってる奴がいるからさ。 危険とか言ってられないし。
   意地でもこの海を渡って帰らないと。この船もそいつに借りてるものだしさ。」

ロ 「そうか。 ところで 一つ頼みたいことがあるんだが。」

レ 「おぅ。あんた達は命の恩人だからな。
   俺に出来ることなら何でも言ってくれ。」



ロクスは今までのいきさつを話し 海を渡る為に船に乗せてくれるよう頼むと

レヴは快く引き受けてくれた。

一旦 船を港まで戻してサラシャとタトゥミを乗せ

北の大陸に向かってゆっくりと走りだす。



しばしの船の旅に はしゃぐサラシャとフジール。

船首で海を眺めていたフジールがサラシャを呼んだ。



フ 「サラシャ サラシャ! ちょっとこっちにきてみそ。」

サ 「何々〜? 面白いものでも見つけたの?」

フ 「まぁ いいからいいから。目、つぶれって。」

サ 「突き落としたりしないでしょうね?(疑)」

フ 「俺がそんなことするかよっ! 失敬だな。」



勘の良い方ならもうお気づきでしょう。

そうです。 あの映画のあのシーンの再現です!

♪ チャララ〜 ララ ラ〜ラ〜 ♪ (バックミュージック付き)



フ 「ほら 目 開けてみ?」

サ 「ひゃー! すごいすごい♪ 空を飛んでるみたい♪」

フ 「な? すごいだろ。」

サ 「うんv 素敵vv」



後ろからガバチョするフジールに 幸せいっぱいの笑顔を向けるサラシャ。

これは この物語始まって以来のラブラブモードではないかッ!!

ひゃーひゃー! ひゅーひゅー!

ぽよよ〜んとした雰囲気の中 徐々に二人の顔の距離が縮まる。(ドキドキ)

・・・・・が。



ボカッ!!



フ 「いっでぇ――!!」

ロ 「まったく油断も隙もない。サラシャもサラシャだ!」

サ 「ひゃはは♪ 雰囲気に飲まれちゃった。」

ロ 「簡単に飲まれるなっ! フジール、お前は船尾で見張りをしていろ!」

フ 「くそぅ。いい感じだったのに。(痛泣)」



殴られた頭をさすりながら 泣く泣く船尾へ向かうフジール。

(惜しいっ! あと3cmだったわね・・・。)

こっそり二人を盗み見ていたタトゥミは ビールを片手に哀れなフジールを思い涙をぬぐった。



ロ 「そこは 昼真っから呑まれてんな!」





そんな中 ひとり舵を取るレヴにロクスが話しかけた。



ロ 「どれくらいで着くんだ?」

レ 「このまま走れば 1日で北の大陸に着くな。」

ロ 「この船は蒸気船なのに なぜ石炭を焚かない?
   焚けばもっと早く到着出来るだろう?」

レ 「悪いな。 石炭は出来る限り使いたくないんだ。
   それに この船に積んである資源は全て届けものだしさ。」

ロ 「さっき言っていた待っている人・・・にか?」

レ 「まぁな。 俺たちの国は資源があってこそ成り立つ国なんだ。
   だけど トン・ソォークが復活したせいで鉱山が死んでしまった。
   だから俺が南の大陸まで 資源を調達に来たんだよ。
   王子が国を空けるわけにもいかないしな。」

ロ 「もしかして レヴの国は機械文明が発達しているチキン王国か?
   そして待ってる人とは その国の王子。」

レ 「あぁ そうだよ。王国といっても今じゃほとんど機能してないけどな。
   自慢の機械は動かないし 民衆は不安や不満を抱えている。
   このままじゃ崩壊するのも時間の問題さ。」



チキン王国の現状をロクスに告げるレヴの顔はこの上なく辛そうだった。



ロ 「国を思う気持ちは 皆一緒だな・・・」

レ 「てかさ! どっかで見たことあると思ったら あんた達今朝の新聞に載ってたんだ!」

ロ 「新聞に!?」

レ 「ラブチュ王国から来たんだろ?
   トン・ソォークを倒す旅をしているって 一面にでかでかと載ってた。」



新聞の一面に。

ということは 世界中に広まってしまったというわけか。

まずいな・・・ 

トン・ソォークの耳まで届いてないといいんだが。



サ 「ねぇー! なんか海の色が灰色になってきた。」

タ 「ほんとだわ。霧も出てきたし 空気も淀んでる。」

レ 「北の大陸が近づいている証拠さ。
   南はまだそんなに影響が出てないみたいだったけど 北は酷いもんだよ。
   そのうち 世界中が闇に染まる・・・。」



レヴの言葉に 改めてトン・ソォークの闇の強大さを思い知る。

北の大陸での旅は もっと厳しいものになると確信する。



灰色に染まった海から聞こえる波音は

まるでトン・ソォークが サラシャ達をあざ笑っているかのように聞こえた。











    


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