〜 友への思い 〜



とても心地よいとは言えない潮風を受けながら サラシャ達を乗せた船は北へ向かう。

先ほどのレヴの言葉を聞き 改めてトン・ソォークの脅威を感じた。

灰色の海を見ていると そのまま体ごと呑み込まれてしまいそうな感覚に陥る。



サ 「うわわっ・・・」

ロ 「サラシャ。 船室へ入っていろ。」



揺れを増した船に足元をふら付かせたサラシャの腕を ロクスが掴む。



サ 「だいじょぶ だいじょぶ。」

レ 「無理することないぜ ぉ姫さん。それに 潮風はお肌も荒れるし髪もバッサバサになる。」

ロ 「だからレヴの髪はキューティクルが・・・」

レ 「みなまで言うな。(泣)」

サ 「そう言えばレヴはチキン王国出身なんだってね。
   良かったらチキン王国の話を詳しく聞かせて欲しいんだけど。いいかな?」

レ 「あぁ そうだな。まだ時間もあるし。 俺の国は・・・」



レヴは舵を取りながら ゆっくりと話し始めた。







チキン王国。

この世界で唯一機械文明が発達している国。

一言に機械といっても 無機質な感じではなく

機械と共に生活している。 そんな感じだった。

近くの鉱山では豊富な資源も取れ いろいろと利用価値のある機械が発明されていた。

なんの不自由もなく 活動的な毎日を過ごして

これからも もっと発達を遂げていくはずだった・・・・



トン・ソォークさえ復活しなければ。



魔物に国を襲われ 民衆が一丸となり機械で対抗した。

資源さえあれば 魔物なんて恐るるにたらない。

機械でいくらでも追い払うことは出来る。

しかし 資源の豊富だった鉱山が次々と死んでいった。

資源がなければ 機械は動かない。

機械が動かなければ 魔物に対抗することは出来ない。

今は蓄えてあった資源でなんとかしのいでいるが いつかは底を尽く。

当然 民衆は恐怖を感じずにはいられないわけで。



そんな中 誰かが言った。

「なぜこんな事態に 王国は何もしない!」

何を間違ったか 怒りの矛先は王国へ向けられた。

何もしないわけじゃない。 したくても何も出来ないというのに。



そして誰かが言った。

「王国は資源を隠し持っている。王族だけが助かるつもりだ。」

一度燻った火は消えることなく その怒りは増すばかり。

王国に保存してあった資源など すでに底を尽きているというのに。



王子は希望を捨てずに 国を救うため

毎日一人で鉱山に足を運んでいるということも知らずに。





レ 「アイツは民衆を見捨てるような奴じゃない。
   そんなこと みんなわかってるはずなのに・・・」

サ 「アイツとは 王子のこと?」

レ 「そうさ。」

ロ 「王子をアイツと呼ぶとは・・・ レヴは一体どういう関係だ?」

レ 「俺の母ちゃんがさ やけに手先が器用なもんだから
   王国の機械整備士として雇われてたんだよ。それで 俺も王国へ出入りするようになって。」

ロ 「なるほどな。」

サ 「大事なお友達・・・なんだ。」

レ 「アイツ 俺が民衆に王国の現状を説明してやるって言ったらこう言ったんだ。」





余計なことすんなよ。 そんなこと言ったら民衆が失望するだろ。

泣いて嘆くより 怒っていたほうがいいのさ。

怒りってのは 生きる強さに繋がる・・・。

だったら僕は 喜んで怒りの的になってやるよ。(・_・)ノ





サ 「立派な王子ね。」

レ 「あぁ。 だから俺はアイツのためにも早くこの資源を届けてやりたい。」



サラシャは 同じ国を守る立場として その王子に心を打たれた。

自分は 民衆から怒りをかったらそう強くいられるだろうか。

その王子に 会ってみたい・・・



サ 「ロクス。」

ロ 「あぁ わかっている。」

サ 「うん。チキン王国へ行こう。」

ロ 「人手が多いほうが 早く着けるだろう? レヴ 俺たちも同行させてもらうぞ。」

レ 「あんた達・・・ 先を急いでるんじゃないのか?」

ロ 「言っただろう。我侭なぉ姫さんなんでな。言い出したら聞かないんだ。」

サ 「我侭だなんてしっつれいねー! 自己中だと言って頂戴。」

レ 「 (それ たいして変わらないんじゃ・・・)
   ぉ世話係りってのも大変だな。」

ロ 「!! 護衛隊長だッ!(ビシッ)」





(まぁ こんなことになると思っていたけれど。北の大陸 アタクシも心してかからなくっちゃね。)



一通り会話を聞き終えてからタトゥミは

残っていたビールをグイッと一気に呑み干した。



その頃 フジールは・・・

船尾で一人 居眠り中。







   


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