〜 動乱のチキン王国 〜



視界の悪い海を進み 霧の向こうにうっすらと大陸が見えてきた。



レ 「そろそろ着くぞ。」



そう言いレヴは碇を下ろす準備を始めた。



ロ 「何か手伝うことはあるか?」

レ 「じゃあ 資源を下ろすのを手伝ってもらっていいか?」

ロ 「わかった。 その前に・・・」



ロクスは船尾へと行き のん気に居眠りをしているフジールの耳をひっぱり起こす。



フ 「・・・zzz」

ロ 「居眠りしながら 見張りとは器用だな。」

フ 「イテテテッ!!」

ロ 「そろそろ着くぞ起きろ。 降りる準備を手伝え。」

フ 「つーか もっと優しく起こしてくれっての。」

ロ 「ふっ。 優しいのは名前だけなんでな。(謎)」





ひっそりとした港に船を付け 資源を全て下ろし

サラシャ達は 北の大陸へ足を踏み入れた。

そして 資源を荷車に乗せ 王子が待つチキン王国へ向かう。



所々 緑が残ってるとはいえ 南の大陸とは比べ物にならないくらい

大地は荒れ果てていた。

その現状を 目の当りにしたサラシャのショックは相当大きい。



サ 「みんな トン・ソォークのせいなんだね・・・」

レ 「本当なら今の時期 ここには綺麗な花が咲くんだけどな。」

タ 「いつか 杜の都の木々も枯れ果ててしまうのね。」

ロ 「このままほおっておけば・・・ だがな。」

フ 「そうならない為にも 俺たちが頑張らないとッ!!」

レ 「すごいよな あんた達。あのトン・ソォークに立ち向かおうなんて。
   怖くはないのか?」

サ 「恐怖がないと言えば嘘になるけど。
   でも 何もせずに闇に呑み込まれるより 今自分が出来ることをしたいって思う。」

レ 「そうか。 頑張ってくれよ ぉ姫さん。
   って、どうかしたのか? ロクス。」



レヴの隣で荷車を引いていたロクスが急に立ち止まった。



ロ 「囲まれているな・・・。」

タ 「そのようね。」



木々の隙間から チラリと見える黒い影。

タトゥミもそれに気付き 険しい表情を見せた。



レ 「何? どうした?」

ロ 「タトゥミは後ろを頼む。」

タ 「えぇ 任せて。」

ロ 「サラシャ 俺の後ろへ。」

サ 「ほぃほぃ。 レヴも構えておいたほうがいいよ。」

レ 「だから 何がどうしたって言うんだ?」

タ 「来るわよッ!」



タトゥミがそう言ったと同時に 魔物の群れが襲い掛かってきた。

プーニを襲っていた魔物と同じ種類。

トン・ソォークの手下だ。



レ 「ちっ! こんな所で!」

ロ 「レヴは資源を守れ!」

フ 「俺はどうすりゃいいんだよー!?」

ロ 「そんなことは自分で考えろッ!」



フジールは んだよ!くそったれ〜!!な勢いで持ってきた画鋲を

ビシビシ魔物に投げつけた。

てか いい加減 短剣使えよぅ。

タトゥミは 跳びかかる魔物をフレイムで次々に燃やしてゆく。

そしてロクスは 鮮やかな太刀筋で魔物を仕留めていった。



戦闘は 一瞬にしてカタがついた。



ロ 「いくら束になったところで 所詮は雑魚だ。」

タ 「それはそうだけど。いきなり襲われるなんて思いもしなかったわ。」

フ 「ふぅ〜。やれやれ。」



戦闘に貢献したかどうか定かでないフジールが額の汗を拭う。





資源を守りながら彼らの姿を見ていたレヴはその強さに圧倒された。

画鋲くんは微妙だけど 彼らの強さは本物だ。

彼らなら・・・



消えかけていた希望の光を再び見たような気がした。







その後、地下道を使い無事にチキン王国の城へ到着した。

レヴが扉を叩くと 中から合言葉をかける者がいた。



? 「クリリンは?」

レ 「もう生き返らねぇんだぞ!」



レヴがそう答えると 勢いよく扉が開く。



? 「レヴ―! よく無事で戻って来てくれた!」

レ 「待たせたなー! ヒヨー!」



ガッツリ抱擁する二人。 

ヒヨと呼ばれた者が レヴの後ろに立つ4人に気付いた。



ヒ 「アレ? この人達は?(・・*)」

レ 「俺の命の恩人なんだ。ぉ姫さんにロクスにタトゥミに画鋲くん。」

フ 「フジールだよ、フジール! 画鋲じゃないっての!」

レ 「あぁ 悪い悪い。」

ヒ 「レヴがぉ世話になったんだね。
   僕からもお礼を言わせてもらうよ。ありがとう。
   僕はこの国の王子 ヒヨッティ・チキチキ=バーン・4世。
   気軽にヒヨと呼んでくれて結構だよ。」



“ぉ世話”という言葉に過敏に反応したロクス。

何度も同じことを繰り返してなるものか・・・



ロ 「護衛隊長のロクスです。
   こちらこそレヴには感謝している。
   レヴがいなければ海を渡ることは出来なかったからな。」

ヒ 「ロクス!? 聞いたことがある。じゃあ君達がラブチュ王国の!
    (あれ? 僕の記憶だとぉ世話係りだったような。ま、いいか)

サ 「はい。サラシャと申します。 お会い出来て光栄ですヒヨ王子。」

ヒ 「こちらこそ。 立ち話もなんだから奥へどうぞ。
   こんな状況だからたいしたおもてなしは出来ないけどね。(・・、)」



奥の広間へ通され 話の続きは用意してもらった飲み物を頂きながらすることにした。



ヒ 「あのトン・ソォークを倒すために旅をしてるんだってね。新聞で見たよ。
   こんな状態でなかったら僕も何か手助けをしてあげたんだけど。」

サ 「レヴから話は聞かせてもらいました。 大変なことになってるみたいで・・・。」

ヒ 「うん。資源は取れないし 自慢の機械は動かないし
   民衆達は不満と苛立ちを隠せないでいる。
   本来のチキン王国とはまったく別の国になってしまったよ。」

タ 「でも レヴが調達した資源でどうにかなるんじゃなくって?」

ヒ 「そうだね。資源は明日にでも民衆のもとへ持って行こうと思う。」

ロ 「これで王国への疑いも晴れて 民衆の気も治まるだろう。」

レ 「だな♪」

ヒ 「あ、そうそう。資源と言えば炭鉱でこんなものを見つけたんだ。
   見たこともない石だったから持って帰ってきたんだけど
   資源にはならなかったよ。」



そう言ってヒヨが袋から出した石を見て サラシャ達は目を丸くする。



サ 「そ、それはッ!!」



そして 次の言葉を口に出そうとした時だった。

地響きが聞こえ 飲み物が注がれていたカップがテーブルから落ちた。



フ 「なんだ!? 地震かっ!?」



そこへ一人の兵士が走りこんで来た。



兵士 「報告します ヒヨ王子!
    民衆達が・・・ 民衆達が門を破って城を攻めてきています!」

ヒ  「なんだって!?」



ヒヨは椅子から立ち上がり ベランダに向かい外を見下ろした。

ヒヨの目に映ったのは 中庭で行われている王国兵士と民衆の争い。



なんてことだ・・・

とうとう民衆たちが暴動を起こした。



民衆 「資源を出せ―! (・_・)ノ」

民衆 「俺たちを見捨てる気か―! (・_・)ノ」

民衆 「汚いぞー、ゴラァ―! (・_・)ノ」



サラシャもベランダに出て中庭を見る。

人と人との争い。

それは目を覆いたくなる光景だった。



ヒ  「やめろ やめるんだ! 民衆に手を出すなと下の兵士に伝えろ。」

兵士 「でも ヒヨ王子。それでは 城が!」

ヒ  「城なんてどうでもいい。 兵士と民衆が争ってどうするんだ!」

兵士 「ヒヨ王子大変です!」



また別の兵士が駆け込んできた。



ヒ  「今度は何だ!?」

兵士 「今、見張りの兵士から報告がありまして
    北の空より魔物の大群がこちらに向かって押し寄せてるとのことです!」



これまた なんてこった。

こんな時に。

これでは三つ巴になってしまうじゃないか。

魔物が来る前に なんとかしてこの争いを止めないと。



レ 「俺が下の連中らを説得してくる!」

ヒ 「レヴ!」



レヴはそう言うと 一目散に駆け出した。



サ 「ロクスも行って!」

ロ 「言われなくとも。」

タ 「アタクシも行くわっ!」



ロクスとタトゥミも 争いを止めにレヴの後を追う。



ヒ 「どうしたらいいんだ。 このままじゃ・・・」

サ 「ヒヨ。民衆たちに語りかけるのよ。
   王子の言葉なら 民衆の心に届くはず。」

ヒ 「この騒ぎじゃ心に届くどころか耳にも入らないよ。」

サ 「そうね。どうにかして民衆の意識をこっちに向けさせないと。」

フ 「こんなの 見てられねぇ・・・。」



早くしないと このままでは魔物に備えることも出来ない。

でも 焦るばかりで何の考えも思いつかず

ただその争いを見つめることしか出来ない悔しさに サラシャは唇を噛み締めた。











   


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