「サラシャ！ どこにいる？ 利き酒の時間だぞ！シギュマ先生がお待ちだ。」
足音の主は一旦は通り過ぎたものの まだ辺りをウロウロしていた。
どうやらサラシャを探しているらしい。
「やばっ！ ロクスだわ。 てか、もうそんな時間！？」
「利き酒って・・・（ぉぃぉぃ） そんなこともすんのか！？」
「そうよぅ。私が最も苦手とするぉ勉強よ・・・。
そんなことより フジール。その本早く元の場所に戻して。」
「わかった。」
ロクスに気付かれないように 物音を立てず本を戻そうとしたフジールだったが
足元に散らばっていた本につまづいて 見事に本棚へ突っ込んでしまった。（ぉ約束デス）
ドサドサッ―――！！
「うわわっ。フジールのぉ馬鹿！何やってんのよ〜！」
「サラシャ？ ここにいるのか？」
その音に気付いたロクスは二人がいる部屋へと入ってきた。
部屋に入りロクスの目に映ったものは 本に埋もれているフジールの姿。
「貴様、ここで何をしている！」
そう言うなり腰に下げた鞘から剣を抜き フジールへ斬りかかった。
「ほいほいっと♪ あっぶねぇなぁ！ 何しやがんだロクス！」
身軽にロクスの剣を避けるフジール。
「当然の対応だろう。フジール、おまえには城への出入りは禁じておいたはずだからな。」
「そんなの関係ないもんねー。んじゃ、今日はこのへんで。またな サラシャ♪」
そう言うとフジールは３階であるこの部屋の窓から飛び降り
城壁をもひょいひょいと飛び越して街へと帰っていった。
「相変わらず 身だけは軽い奴め。
オフ会の許可は出さないくらい頭はかたいくせに・・・（謎）」
「ロクス。剣なんか抜いてフジールを斬るつもりだったの？」
「心配するな。ちゃんと避けれる範囲で留めた。
それよりもサラシャ、フジールとはあれほど会うなと言っておいただろう。
街の者と親しくするのは構わないが 特別な好意をもって接するのは良くない。」
「でも・・・ べつに やましいコトとかはないし・・・」
「何かあってからでは遅いから言っているんだ。
もし何かあってみろ。国王から全てを任されている俺の立場はどうなる？」
「そりゃそうだけどさぁ。」
「なら文句は言うな。 さぁ、シギュマ先生がお待ちかねだ行くぞ。」
身をひるがえしサラシャの先を歩くロクス。
彼はこの王国直属の騎士である。
先祖代々から受け継がれている意志。 王国に忠誠を誓い 全てをかけてお護りする。
そんな家系にロクスは生まれ この城で育ち
物心がつく前から剣を持たされ 父から剣技を教わった。
ロクスの父は国王専任の護衛隊長であり 国王から絶大なる信頼を受けていた。
そんな父を尊敬し その背中を見て ロクスは日に日に強くなっていった。
そして ロクスが１５歳になった日に 王女であるサラシャ姫の専任護衛隊長に任命された。
あれから何年か過ぎたが 当のサラシャ姫がドジだったり 自己中だったり
城を抜け出し姿を眩ましたり アイスクリームを食べ過ぎたり
まったく何をしでかすかわからなかったりで
護衛隊長というよりは お世話係りと言ったほうが正しいのかもしれない。
「ところでサラシャ。 あんなところで何をしていたんだ？」
「ちょっと調べものをね。ねぇ、ロクスは輝勇石って知ってる？」
ロクスは“輝勇石”に反応して 長い廊下を歩く足を止めた。
「どこで そんなことを！？」
「だからさっき資料部屋で見たの。 知ってるんだね？
その輝勇石でトン・ソォークを倒せるって本当なのかな。」
「話には聞いた事はあるが・・・」
「やっぱり本当なんだ！ 私、輝勇石を探しに行こうと思ってるの。」
「やめておけ。なんのアテもなく探せると思っているのか？」
「そんなのやってみなきゃわかんないでしょ。」
「それに・・・ まだその時ではない。」
「ん？ 何それ？ どういう意味？」
「いや、気にするな。 とにかく つまらないコトは考えるな。わかったな？」
「ほぉ〜い。」
（なんだ・・・？ 不気味なくらい聞き分けがいいな。）
その夜―――――――
「とかなんとか言って 大人しくしていると思ったら大間違いよ。
ロクスには悪いけど絶対探しに行くもんね。フジールとも約束したし。
あぁ、神様 黙って旅立つサラシャをお許し下さい。（棒読み）」
サラシャは旅の仕度を整えると 裏口から城を抜け出した。
広い庭を走りぬけ 正門ではなく普段あまり使われることのない通用門へと向かった。
その門を抜ければ城下町に出る。サラシャの計画は自分の中ではバッチリだった。
通用門へ着くと 壁にもたれかかり腕を組む人の姿が見えた。
「装備は万全か？」
「ロ、ロクス！？ なんでここに？」
「ふっ。俺がサラシャの行動をわからないとでも？」
「むぅ〜。全てお見通しってことね。でも、止めたって無駄よ。そこどいて！」
「どいたところで通用門は鍵がないと開かないぞ。」
「あ・・・ そうだった。スッカリ忘れてた。」
「ほんとにサラシャはぉ馬鹿だな。一番肝心なことだろう。」
そう言うとロクスはガチャガチャと鍵を開け 門を開いた。
「えっ？ ロクス、止めないの？」
「トティ国王には俺から話をしておいた。
強い覚悟があるのなら 自らの手で世界を救ってみよ。とのことだ。」
父であるトティ国王からの思いがけない伝言だった。
「ほんとに？」
「あぁ。 何をぼぉっとしている。行くんだろう？ 輝勇石を探しに。」
「うんっ！ じゃあ、行ってくる！」
サラシャが勢いよく門を走り抜けようとすると首ねっこをロクスに捕まれた。
「待て待て、行ってくるじゃなくてだな・・・ 俺も一緒に行くんだ。」
「みゃ？ そうなの？」
「当然だろう！」
「そか。ぉ世話係りだものね。（笑）」
「護衛隊長だっ！！」
「まぁまぁどっちでも同じようなものだすぃ。(*￣∇￣*)ひゃっひゃっひゃ 」
（先が思いやられるな。 覚悟が必要なのは俺のほうかもしれない・・・汗）
そして二人は 輝勇石を探す旅へ出るべく ラブチュ王国をあとにした。
 
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