サラシャとロクスは城を後にし 街をぬける。
まだ朝日が昇らない街はひっそりとしていた。
「静かだねぇ。」
「そりゃまぁ、夜明け前だしな。皆、寝てるんだろう。」
「そうだけど〜。いつも賑やかなだけに静かだと寂しい気がするね。」
「そうだな。王国を離れるのが惜しくなったか?」
「ううん。ただ、旅に出る前に皆に会っておきたかったなぁ。」
「当分は会えないからな・・・
しかし会えばどうせ名残惜しくなるだろ? 会わずに行くのが正解だ。」
海の幸も山の幸も豊富で 商人が行き交い 多くの人で賑わう街。
広場からは絶えず子供たちの笑い声が聞こえ
そこにある噴水では城を抜け出してサラシャもよく遊んだものだった。
何の不自由もなく豊かで 笑顔と活気であふれた街。
この世界に数ある王国の中でも 屈指の大国。
ラブチュ王国はそんな国であった。
二人は街を抜け 広大な平原を薄明るい空に向かって歩いていた。
しばらくすると 急にサラシャが立ち止まり何か考え込む。
「どうした?」
「あのね、なぁ〜んか忘れてる気がするんだよね。」
「だから装備は万全かと聞いただろう!何を忘れたんだ?
化粧道具か? それとも、おやつのアイスか?」
「それはちゃんと持ってきた。」
「てか、アイスは溶けるんじゃ・・・」
自分で聞いておきながら アイスを持ってきたサラシャに呆れていると
遠く後ろのほうから人の声が聞こえた。
「おぉ―い! 待て、待て、待て―――!!!」
そう言いながら全速力でこっちに駆けてくる人がいる。
こんな夜明け前に 誰かと思いきや・・・・
「あ・・・ フジールのこと忘れてた。一緒に行こうって約束してたのに。」
(普通、忘れるか?)
「サラシャ、置いてくなんてひっどいぞ! ゼィハァ・・・・」
「ごめん、ごめん。ついうっかりすっかり。」
「うっかりすっかりじゃねぇよ!\(>◇<)/」
「だってね、フジールは他の皆さんと面識ないし
この物語に出演させるのはどうかなぁ〜なんて思ったりしてね。」
「執筆の裏話的なことはするなっての!」
「あ、そう? んじゃ、一応出演延長ってことで。」
「てか、ロクスも一緒に行くのか?」
「それはこっちのセリフだ。なるべく足手まといになる者は連れて行きたくない。」
「なんだよ、それ。失敬だな。」
「武器は持ってるのか? 扱えるのか? 実績は?」
「実績とかはないけど、武器ならちゃんと持ってきた。」
「ほぅ。 で、何を?」
「画鋲とか 塩コショウとか。あ、輪ゴムも使えそうだよな。」
「あのな・・・ 子供の遊びじゃないんだぞ。 (さすがヘボキャラだけのことはある)」
「えぇ〜! 私も似たようなもの持ってきたけど!?」
「サラシャ・・・(呆泣) 一体、この旅をなんだと思ってるんだ。
命を賭けるといっても過言ではない旅になるんだぞ。」
「うん。大丈夫。その覚悟は出来てる。」
幸いにも ラブチュ王国にはまだトン・ソォークの魔の手が伸びていなかった。
しかし いつトン・ソォークの魔の手が押し寄せてくるかわからない。
自分の国を守りたい。街の人の幸せを守りたい。
だけど 自分の国を守るだけでは 真の平和は訪れない。
世界にはトン・ソォークによってすでに闇に呑まれた人もいるだろう。
こうしてる今も闇に脅えて暮らす人々がいるだろう。
全ての人を救いたい。 トン・ソォークをこの手で倒したい。
わりと正義感があるサラシャはそう考えていた。
「私はね、姫として国を守るんじゃなくて 人として世界を救いたいのよ。
その為だったら この若さでちょっと惜しいけど命を賭けても構わない。」
「なるほどな。一応、真面目に考えてはいるんだな。(ちょっと安心)
フジールはどうなんだ?その覚悟はあるのか?恋愛感情だけでついて来られても迷惑なだけだが。」
「俺はただサラシャがやろうとしてることを手伝いたい。
それなりの覚悟だって出来てる!! (本当はかなりビビってるけど・・・)」
「ふっ。そう言うと思った。 ならこれくらい持っておけ。」
ロクスは懐から 短剣を出しフジールに投げ渡した。
「うわっ!? これは・・・?」
「画鋲や輪ゴムじゃ話にならん。それなら初心者でも多少は扱えるだろう。
使い方は実践でな・・・」 (アーロンかよ!?)
「おぉ!! ありがとロクス。短剣、かっけぇ〜♪」
「そのかわり自分の身は自分で守れよ。 俺はサラシャ以外は守らないからな。」
「お世話係りだもんな。」
「護衛隊長だっ!」
「だからよく似たものだって。(* ̄∇ ̄*)ひゃっひゃっ 」
トン・ソォークを倒す旅。
この先どんな危険な敵や困難な道が 待ち受けてるかわからない。
しかし 迷わずに進む。
トン・ソォークを倒す鍵となる輝勇石を求めて。
すっかり朝日も昇り サラシャが日焼け止めを塗リ終わるのを待ってから3人は再び歩き出す。
自らの命を賭してでも 世界に真の平和を取り戻す旅が今始まる。
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