〜 動き出す黒い影 〜



ヒ 「へぇ〜 赤の輝勇石の戦士を追って北の大陸に来たんだね。」

サ 「うん。 それでレヴとボッタリ会ってさ。」

ロ 「ボッタリじゃなくて バッタリだ! てか バッタリじゃなく無理やりだろう。」

タ 「それも運命だったのよ。(しみじみ)」

フ 「危うくペチャンコになる運命だったっての!」

タ 「・・・明日は雨になるかしら?」

フ 「人の話聞け―――ッ!!」

ロ 「うるさいぞ フジール。」

ヒ 「まぁまぁ。 それで? その赤の輝勇石の手がかりは?」



そうだった! 緑の輝勇石の戦士 ヒヨが仲間になったのはいいが

北の大陸に渡って 赤の輝勇石の情報を一つも得てなかった!

と言うよりも 情報収集してる暇がなかったというのが正しい。

わかっているのは トン・ソォークを倒すために旅をしているということだけ。

それだけの情報(とも言いがたいが)で 次の目的地を決めれるはずもない。



だんだんと夜もふけてきて

ヒヨから近くに小さなな町があると聞き 今日はそこで宿をとって

これからのことを考えようということになった。











その頃 はるか北の大地 ―――――――



空気は淀み 辺り一面が闇に包まれ生き物の気配は全くない。

あるのは真っ黒な雲に覆われた 黒い巨塔だけ。

その中で サラシャ達の様子をうかがっているモノがいた。

その正体は名前を出すのも耐え難い 存在すら許しがたい 醜きトン・ソォーク。



ト  「動き始めたか。 忌まわしい意思を受け継ぐ奴らが・・・
    だが 1000年の時を経て復活した俺様が
    むざむざと殺られるわけにいかないブー。
    今度こそ この世の全てを俺様色の闇に変えてやる。
    その為には 邪魔者を排除しないとブー。」

下僕 「ご安心下さい トン・ソォーク様。
    もうすでに 手は打ってありますブ。」

ト  「やるじゃないか。 それでどのような手だ?」

下僕 「それは後のお楽しみですブ。 ただ 奴らの弱点をつくだけですブ。」



闇の中で聞こえる不気味な声は 確実にサラシャ達の命を狙っていた。











そして 町に着いたサラシャ達は

目の前に広がる光景に 誰しもが声を閉ざした。



タ 「・・・・こ、これは?」

ヒ 「ひどい。 ひどすぎる・・・」

ロ 「奴らの仕業か。」



そこに町と言えるものはなかった。

何もかも壊されて 無残な姿で横たわる人々。

あまりの姿にフジールは思わず目を背ける。



フ 「こんなの信じらんねぇ・・・」

サ 「目をそらしちゃダメ。ちゃんと現実を受け止めないと。」



ついこの間まで ラブチュ王国でのほほんと暮らしていた。

トン・ソォークの復活もどこか他人事に思っていたのかも知れない。

容赦なく叩きつけたれた現実。

サラシャはトン・ソォークへの怒りと共に 自分の無力さに怒りを感じた。







サラシャ達はもちろん宿をとれるはずもなく 町から少し離れた場所で野営をすることにした。

枯れ木を集めて火を灯し 5人はそれを囲うように座った。

先ほどの町の様子が頭から離れず 誰も何も話すことなくただ静かに火を見つめる中

ヒヨだけが何やらゴソゴソとやっている様子だった。



サ 「ヒヨ 何をやってるの?」

ヒ 「レヴがいろいろ持たせてくれたから 武器の一つでも作ろうかと思って。
   ほら 僕手ぶらだし。 これからの旅には必要だろ?」



これから・・・

そう。 自分たちは起こってしまったことでなく これからのことを考えなければいけない。

悲しんでいる場合じゃない。

これからどうすべきか考え 迅速かつ的確に進まねば。



ヒヨに感化されたのか 落ち込み気味だったフジールも短剣の手入れを始めた。

それを隣で見ていたサラシャは そっとフジールの手を握った。

ちょっとビックリしつつフジールは頬を染めてサラシャを見た。



フ 「ど、どした?」

サ 「フジール 初めてもったいぶってた短剣抜いたんだってね。ロクスに聞いたよ。」

フ 「うん。 役に立ったかどうかわかんないけど 俺なりに頑張ってみた。」

サ 「無茶はするべきだけど 気をつけてよね。」

フ 「(するべきなのかよっ 汗)」

サ 「優しい言葉とか かけてあげたことないけど
   これでも私はフジールのことを一番心配してるんだから。」

フ 「サラシャ・・・。 だ、大丈夫さ! 俺は頑張るさ 頑張るとも!!」



サラシャの言葉に嬉し涙が出るのこらえ フジールはガッツポーズを掲げた。

が・・・



サ 「うん。ロクスやタトゥミは安心だけど フジールは頑張らないとね!」

フ 「って 心配要素なだけかよ・・・」



がっくり肩を落としうなだれた。



いかにもサラシャらしい応援の仕方に タトゥミはクスリと笑みをもらした。

ロクスは おそらくこうしてフジールと会話することによって

自分らしさを取り戻そうとしているサラシャを見て ある一つのことを考える。



他の皆には 言っておくべきか・・・

どちらにせよ サラシャに言うにはまだ時期が早いな。



ロ 「サラシャ そろそろ休め。」

サ 「うん。 ねぇ ロクス。ラブチュ王国にも魔物が攻めてきたりしてるのかな?」

ロ 「もしそうだとしても 大丈夫だろう。
   王国には騎士団もいるし 俺の父君がいる。」

サ 「そだね。 おやすみ。」



まだ野営に慣れないサラシャは深い眠りにつけず

国のことを思ってか その晩はトティ国王の夢を見た。









  


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