シュルルル―ン!!
朝 サラシャは聞き慣れない音を耳にして目を覚ました。
サ 「・・・ん〜 何の音・・・?」
ロ 「起きたか?」
少し寝ぼけた声で起き上がるサラシャに
隣で座っていたロクスが 朝ごはんの用意を始めた。
朝ごはんといっても 野営なので簡単に出来るスープだけである。
ロクスは既に火にかけてあったスープを器にすくうと
熱いから気をつけるようにと言って サラシャに手渡した。
ロ 「よく眠れたか?」
サ 「ボチボチかな。 でもね 久しぶりにお父様の夢を見たの。」
ロ 「ほぅ。 それは良かったな。」
サ 「うん! お父様の顔を見ると悩みとか全部ぶっとぶ感じ♪」
スープを一口飲み サラシャは楽しそうに微笑む。
夢に出てきただけで 昨日あんなに落ち込んでいたサラシャを
立ち直らせることが出来るトティ国王の存在はやっぱり偉大だ。
サ 「ところで さっき妙な音がしたんだけど 何だったのかしら?」
ロ 「音? あぁ あれだろう。」
ロクスが指差す先を見ると 離れた場所にタトゥミとヒヨとフジールがいた。
サ 「3人してあんな所で何やってんの?」
ロ 「ヒヨが作った武器の試し投げをしてるんだとよ。」
サ 「試し投げ?」
ヒヨが一晩かけて完成させた武器はブーメラン。
それもヒヨの背丈と同じくらいのやけにどでかいブーメラン。
そして柄先には 刃が付けられていた。
サラシャが起きたので 3人は試し投げを一時中断して
昨晩と同じように火を囲んで座った。
サ 「すごいねー ヒヨ。そのブーメランスネイク!」
ヒ 「うん。 自然の力に体をあずけるかの如く無心で振りぬくっ・・・って違う違う!
スネイクは余計だって。 まったく 何でも自分の好きなものに繋げようとするんだから。」
サ 「いいじゃないのさぁ む〜。」
フ 「( ヒヨも物語慣れしてんだな・・・・ )」(感心)
タ 「それにしても 一晩で完成させるなんてすごいわね。」
ロ 「さすがに 手先は器用なんだな。」
ヒ 「まだ完成ってわけじゃないんだけどね。とりあえずタトゥミとフジールに協力してもらって
魔法耐性力と飛速度、射程距離のデータはとれたけど。
イメージモデルは珊瑚ちゃん(犬夜叉)の飛来骨さ。」
タ 「それってパクリじゃなくって?」
ヒ 「それは僕じゃなくて 発想力の乏しい執筆者に言ってあげてよ。
でも これから改良を重ねて空を飛べるようにしたり 機械らしくビーム放ったりで
物凄い武器にしてやるつもりさ。えっへん!」
ロ 「それは 頼もしいな。」
フ 「ところでさ これからどうすんの?」
サ 「うん そのことなんだけどさ。 マオンの所へ行こうと思う。」
ロ 「ドラゴ王国へ行くのか?」
ドラゴ王国はラブチュ王国と姉妹国で 北の大陸で繁栄している国である。
マオンとはその国の姫君であり 従姉妹にあたるサラシャとも仲が良かった。
サ 「赤の輝勇石の戦士は旅をしているって言ってたでしょ?
私たちと同じ旅人なら 情報収集をすると思うんだよね。」
タ 「なるほどね。 情報収集は人の集う場所から・・・」
サ 「うん。ドラゴ王国の城下町にもきっと立ち寄ると思う。
それに・・・ マオンのことも気になるし」
ロ 「そうだな。 チキン王国も魔物に狙われていたんだ。ドラゴ王国も安全だとは言いがたい。」
ヒ 「ドラゴ王国かぁ・・・」
フ 「ヒヨ どうしたぁ? 何か問題でもあんのか?」
ヒ 「いや 問題ってわけじゃないけど。 ドラゴ王国はうちとも国交があって
小さい頃マオンともよく遊んだんだけどさ・・・」
フ 「ならいいじゃんか♪」
ヒ 「マオンはすぐ蹴るし 叩くし ハチャメチャだし 頭が上がらないんだよぅ。
いい子には変わりないんだけど。」
フ 「な・・・ なんかサラシャと似てるな・・・」
どうやらこの世界には 上品でおしとやかな姫らしい姫君は存在しないらすぃ。
サ 「そこ! ぶつくさ言ってないでさっさと行くわよぅ!」
つーわけで 次の目的地はドラゴ王国に決まった。
ヒヨの道案内で一番の近道を進む。
ヒ 「この辺も少し前までは森だったのにな。」
森の草木のほとんどがその色を失っていた。
所々緑が残っているにしろ 鉱山と同様死んでいるに等しかった。
サ 「ヒヨ・・・。そんなに落ち込まないで。 そうだ、景気付けに歌でも歌う?」
タ 「あら いいわね。 お姫様の歌声 ぜひお聞きしたいわ♪」
ロ・フ 「「ダメだ! 絶対に歌うなっ!!」」
ヒ 「どうしたんだよ? 二人とも珍しく息ピッタリじゃないか。」
ロクスとフジールが思いっきり反対するのは 魔女の洞窟での一件があるからであり
まぁ 当然のことだと思う。
とんでもない歌を歌って とんでもないモノが現れたら困るし。
仮にOP曲を歌ったところで 溶けた氷の中に恐竜がいたら厄介だし
玉乗りを仕込める自信もないし へのへのかっぱなんて言ってられない。
歌う気満々だったサラシャは 機嫌を損ねて黙って歩く。
こういう時は あれだ。 さわらぬ神に祟りなしってやつで
皆も黙ったまま静かに歩いていた。
トテペタ トテペタ
ロ 「・・・今 何か音がしなかったか?」
フ 「そうか? 別に何も聞こえないけど?」
サ 「そうよそうよ! 私何にも歌ってないわよぅ!(根に持ってる)」
タ 「いえ・・・ 確かに何か聞こえるわ。 静かに。」
立ち止まり耳を澄ますとトテペタトテペタと奇妙な音が聞こえた。
そして その音は後ろからだんだんと近づいてきた。
ヒ 「魔物かもしれないね。 ちょうどいい。ブーメランの実験台になってもらうとするか。」
ヒヨはニヤリと笑みを浮かべて 背中にしょったブーメランを外した。
そして戦闘態勢で振り向き そこで目に入ったものに釘付けになった。
ヒヨが振り向いた先にいたのは 異形の生物。
顔とも体ともとれる部位。
その中に縦長の黒目が二つついていて 口は半開きの緩い三角形。
そして体からは 3本指の手足が生えていた。
ヒ 「な、なんだアイツッ? 悪意はなさそうに見えるけど・・・(汗)」
その生き物はジッとヒヨを見つめ 突如動き出したかと思うと片手を挙げて
『もっさ〜。』と言葉を発した。
ヒ 「しゃ しゃ 喋ったー!!」
サ 「もっさー!? 今、もっさーって言った!?」
驚くヒヨの陰からサラシャはヒョイと顔を覗かせた。
タ 「サラシャ その生き物が何か知っているの?」
サ 「うん。 王国の勉強でもっさー語を習っていたの。」
ロ 「これがあのもっさーなのか・・・。
たしか もっさーは集団行動を好み 時には合体してキングもっさーになると聞くが。」
フ 「こいつ 一匹しかいないよな。 どうしたんだろ?」
モ 「`~>*M<$+〜=#+”+<={+<>?¥^;;*‘‘@%$”#&」
タ 「もっさー語かしら? 何を話しているかさっぱりだわ。 サラシャわかる?」
サ 「うん。 えっとね 『こんにちわ。』」
フ 「そんで?」
サ 「・・・・・。」
タ 「サラシャ?」
サ 「へへっv ごめん。 そんだけしか訳せないや。」
ロ 「だから もっと真面目に勉強しろとあれだけ言っていたのに・・・。」
サ 「人には得手不得手があるでしょうー!」
タ 「まぁまぁ。それにしても どうしてアタクシたちに着いて来たのかしら?」
ロ 「おまえ 仲間はどうしたんだ?」
フ 「 ( つーか みんな気味悪くないのかよ! )」
謎の異形生物もっさー(でも、もっさー語があるくらいだから世界で認知されてるのだろう)を
囲む3人を遠巻きに見るヒヨ。
もう一度おそるおそるもっさーに視線を落とすと バッチリともっさーと目が合い
もっさーはトテペタとヒヨに近づいてきた。
そしてヒヨの前まで来ると みょ〜んと手を出した。
その手の中には 見覚えのある時計。
ヒ 「僕の時計・・・。 おまえコレを届けにきてくれたのか?」
モ 「もっさー!」
姿カタチはこんなんだけど なんていい奴なんだっ!!
わざわざ落し物を届けるために こんな鈍足で追いかけてきてくれたのかと思うと
ヒヨは急にこの生き物が愛らしく感じた。
ヒ 「おまえ お腹空いてないか? 良かったたらこれ食べな。」
ヒヨが袋からだしたパンを美味しそうに食べるもっさー。
その姿をみて またまた愛着が湧くヒヨ。
他にも何か食べ物がないかと袋をあさると ポロリと豆粒のようなものが転がり落ちた。
それを拾ってパクッと口に入れるもっさー。
ヒ 「うわー、待て待て! それは僕が開発した超小型爆弾だっ!」
必死に止めようとしたが間に合わず もっさーはそのままゴクンと飲んでしまった。
モ 「もっさー!」
ヒ 「だ、大丈夫なのか・・・?」
モ 「もっさー!」
元気に返事をするもっさーを見て ある一つの決意をするヒヨ。
もう あばたもえくぼで もっさーが可愛らしくも見えていた。
ヒ 「みんな 僕はもっさーを一緒に連れていく!」
ロ 「いきなりだな。」
タ 「別にアタクシは構わないけど。」
サ 「いいんじゃない♪ もっさーもヒヨに懐いたみたいだし。」
フ 「あれだろ。 どぅせ また執筆者の無理やり作戦だろ。」
フジール。ちょっと物語りに慣れてきたとはいえ一言余計です。
まぁ 確信はついていますがね。
そんなわけで もっさーが仲間(?)に加わった。
飲み込んだ爆弾はちゃんと消化されるのかな?
そんな心配をしながら ヒヨはもっさーをちょこんと肩に乗せて歩き出す。
それに続きサラシャ達もドラゴ王国に向かって再び歩き出す。
ドラゴ王国には すでにトン・ソォークの手が及んでいることも知らずに・・・・
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