〜 捕らわれた姫君 〜



奇妙な生き物もっさー。 名前はそのままもっさーと呼ぶことにした。

もっさーを肩に乗っけるヒヨは もっさー語を理解出来なくても

互いに気持ちが伝わっているようだった。

それを証拠にヒヨは楽しそうにもっさーと会話をしていた。

その様子を後ろから見ていたフジールは コソコソとサラシャの耳元で囁く。



フ 「・・・つーか 馴染みすぎだろあれ。」

サ 「仲良きことは美しきかな♪」

フ 「美しきかなって アレだぞ? うわぁ、こっち見た!」



クルリンと振り向くもっさーに へっぴり腰になるフジール。

フジールはもっさーが苦手なようだ。



サ 「よく見ると可愛いじゃない。ねぇ タトゥミ。」

タ 「そうね。 ヒヨのマスコットみたいよね。」

フ 「そ・・・ そかな・・・」



危害はなさそうだけど フジールは距離を取りつつ歩いた。

サラシャとタトゥミは相変わらず話に夢中で

ロクスはヒヨの隣を歩いていた。



ヒ 「この森を抜けると あとはドラゴ王国まで一直線だよ。」

ロ 「そうか。 では急ごう。」







その頃ドラゴ王国では ――――――――――





兵士 「マオン姫! 東門が魔物に突破されました! 」

マ  「何ですって!?」

兵士 「そこから魔物達が波のように押し寄せて来ています!」

マ  「なんとかしなさい!」

兵士 「なんとかって・・・ どうすれば・・・ もう私達の力では・・・」

マ  「泣き言なんか聞きたくないわ。 引っぱたくわよ!」

兵士 「は、はいっ!!」



兵士は慌てふためきながらも敬礼をし 急いでその場を去る。

城の最上階から外を見渡すマオン。

突破されたいう東門を見ると まるで黒い絨毯を敷き詰めたように魔物達が流れ込んでいた。



マ  「くっそぅ・・・ ここで城を落とされるわけにはいかないのに。
    せめてサラシャ達が来るまでは持ちこたえないと。」



マオンは新聞で知るよりも早く サラシャが旅に出たとトティ国王から手紙を受けていた。

そして それにはサラシャの秘密も書かれていた。

サラシャは必ずドラゴ王国に来る。 そう確信したマオンは

サラシャの秘密に正直驚いたが 自分にも何が出来ることはないかと

事前に輝勇石の調査をし 黄色の輝勇石のありかをつきとめていた。

あとはそれをサラシャに伝えるだけ。



マ  「サラシャのぉ馬鹿! 何ちんたらやってんのよ。早く来なさいってば。」



キリキリと親指を噛んで遠く荒れた大地を見ると

突如黒い霧に覆われその視界が奪われた。



マ  「な、なにコレ? ケホッ コホッ・・・」

魔  「あんたがマオン姫かい?」



背後から聞こえた声。 振り向かずともわかる。 トン・ソォークの手下だ。



マ  「だったらどうしたつーのよ! うっ・・・・」



マオンは振り向き様に 蹴りを一発喰らわせてやろうとしたが

黒い霧を吸い込んだせいか 酷い嘔吐感とめまいに襲われその場に倒れ込んだ。



魔  「あんたには エサになってもらうブ。」



魔物は意識を失くしたマオンをかつぎ上げると 地下にある牢獄へと運んだ。







そんな事が起こっているとは知らずに 森を抜けるサラシャ一行。



ヒ 「あ、そうそう。この先に泉が湧いているんだ。水の補給していこうか?」

ロ 「そうだな。」

ヒ 「ま 渇れていなければの話だけどね・・・」

モ 「もさもさもっさーッ!!」



急にもっさーがけたたましく声を発して ヒヨに警戒を促す。

もっさーのでっかい目は前方を捕らえ 開いた口からは牙をむき出していた。



ヒ 「もっさー? どうしたんだ!? (てか 牙あるのかよぅ)」

ロ 「どうやら招かざる客のようだ。」

魔 「待っていたブ。 ここがお前らの墓場になるブ。」



ロクスが剣を抜き構えた先には 今まで以上に醜い魔物が一匹いた。



ロ 「下がっていろサラシャ。」

サ 「はーぃ。 既に下がってます隊長〜!」

フ 「ついでに俺も下がってます隊長〜!」

タ 「アタクシ達相手に一匹で来るなんてなめられたものね。丸焼きにして上げましょうか?」



タトゥミはサラシャをかばう様に前にでると 指先に火を灯した。



魔 「そんなこと言っていられるのも今のうちだけブ。魔法使いさんよ〜ブ。
   お前達の弱点はすでに調査済みブ。一網打尽だブ!!」



やけに自信たっぷりの魔物。 一網打尽とは一体どんな弱点を握ったというのか。

気味悪く笑う魔物を見据えるロクスが 斬りかかろうとした瞬間

嫌な匂いが鼻をついた。



ロ 「こ・・・ この匂いは ま、まさか・・・」

魔 「行けー! プチトマト魔軍団!!」



魔物の合図と共に 降って湧いたかのようにプチトマトの魔物がぞろぞろと現われ

こっちに突進してきた!



ヒ 「何かと思えばプチトマトかよ。そんな軍団が何になると言うんだ。」

ロ 「・・・ヒヨ。 すまない ここは任せるル。」

ヒ 「へっ!? ロクス? (てか"ル"って何だよぅ?)」



後ずさるロクスは明らかに動揺していた。

こんなロクスを見るのは初めてだ。

そしてロクスだけでなく タトゥミもフジールも青ざめた表情でその場に固まる。

サラシャに至ってはプチトマトを見た瞬間失神していた。



ヒ 「ロクス! サラシャが倒れてる! 助けないと!」



そう叫ぶも ロクスの耳には届いていないようで必死で剣を振り回していた。

タトゥミに助けを乞おうとするが すでに正気ではなくあたり構わずフレイムを放ちまくりだ。

フジールは・・・ あれ? フジールの姿が見えない!?



フ 「勘弁してくれ〜ッ! 悪霊退散〜ッ!」



泣きながら一人木の上に避難していた。



ヒ 「みんな 一体どうしてしまったんだ?」

魔 「南の大陸の人間はトマトにめっぽう弱いのは本当だったブ。
   さぁ 一気に殺ってしまうブー!」

ヒ 「そうだったのか・・・ でも、僕がいることを忘れるなよ。
   もっさー しっかり捕まっているんだよ。」



ここは僕がしっかりしなきゃ!



ヒヨはブーメラン片手にプチトマト魔軍団に突っ込んでいった。

そして ブーメランを投げて見事な輪切りに仕上げていく。



魔 「な、なんだお前は!? トマトが怖くないのか!?」

ヒ 「あいにく僕は北の大陸育ちでね。 トマトは大好物なんだ。」

魔 「そんな話 聞いてないブー! と、とにかくかかれー!」



魔物の声でより数を増すプチトマト魔軍団。

その数の多さに相手がトマトとあれど ヒヨは苦戦していた。



ヒ 「ダメだ キリがない。」



ウジャウジャと真っ赤に染まる地面。

サラシャの元にプチトマト魔軍団が迫る。



ヒ 「サラシャー! 目を覚ませっ!」



返事がない。 ただの屍っぽくなっているようだ。

プチトマト魔軍団が無抵抗のサラシャに襲いかかろうとした時

ヒヨの肩からみょよよ〜んと青い手が伸びた。



パクッ



もっさーだ。 もっさーはプチトマト魔軍団を掴み口に運んだ。



ヒ 「もっさー! お前 何でもいける口か!?」

モ 「もっさっさー!」

ヒ 「よし。じゃあ 食べれるだけ食べて食べて食べまくれっ!」



プチトマト魔軍団と必死に闘うヒヨともっさー。

もっさーの場合は闘ってるというか 食事をしているというか・・・ まぁこの際どっちでもいい。

そして その様子を煙草を吸いながら 助けようともせずただ傍観者の如く見ている者が一人。



? 「手こずってるみたいだな。噂の一行がこの程度とはお笑いだぜ。」

ヒ 「だ、誰だ君は? 手を貸してくれないか?」

? 「俺は賞金稼ぎだ。 助けてやってもいいがタダじゃないぜ。」

ヒ 「あぁ 構わない。あそこに倒れているお姫様を守ってくれ。」

? 「じゃあ 先払い願おうか?」



いくら払うか 交渉とか 値切るとか今はそんなことをしている暇はない。

ヒヨは懐からお金の入った袋を取り出し 袋ごと賞金稼ぎに投げ渡した。

賞金稼ぎはお金を受け取ると ペッと煙草を吐き捨て大剣を取り出す。



? 「毎度アリ♪ お姫さんは俺に任せておけ。」





その言葉を聞き安心したヒヨはサラシャのことを任せて 神経をプチトマト魔軍団に集中させた。

しかし その後 後悔することになる。







もっさーの食欲も手伝って時間はかかったが プチトマト魔軍団をやっつけることは出来た。

残ったのは潰れたプチトマトと やっと正気を取り戻した3人。そしてヒヨともっさー。

そう。 そこにサラシャの姿はなかった。そして賞金稼ぎの姿も消えていた。



フ 「サラシャは どこ行ったんだ!?」

ロ 「くそっ!! まさかトマトで攻めてくるとは・・・」

タ 「ま、まさか 魔物に・・・」



焦りを隠せない3人に ポツリとヒヨが呟く。



ヒ 「魔物じゃない・・・・。 あの賞金稼ぎだ。」

ロ 「賞金稼ぎ・・・だと?」



ヒヨはみんなが取り乱している最中に起こったことを全て話した。

サラシャは魔物ではなく賞金稼ぎにさらわれたのだ。

おまけに ヒヨの全財産も奪われちった。

危機から逃れる為とはいえ うかつだった。

しかし 誰もヒヨを責めることは出来ない。

だって・・・  ねぇ?







   


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