〜 託された使命 〜



ドラゴ王国へ向かうサラシャとリュール。

チョコレートを全て食べつくしたサラシャは

あとでロクスに怒られちゃうなぁ〜などと思いながらも 先ほどから考えていたコトを口に出した。



サ 「あのね リュール。 私たちと一緒に来ない?」

リ 「依頼の次は勧誘かよ?」



足を止めずに気のない口調でそう答えるリュールにサラシャは続ける。



サ 「う〜ん。勧誘ってわけじゃないけど。言い方を変えると私たちと一緒に来るッ!」

リ 「って、決定かよッ!!」

サ 「決定というか決意だよ。リュール自身の覚悟が必要なの。
   リュールは赤の輝勇石に選ばれた戦士だから。」

リ 「そういやさっきも輝勇石がどーこー言ってたな。何のことなんだ?」



煙草に火をつけて訊ねるリュールにサラシャは一つ一つ確かめるように説明をしていった。

世界に散らばる6つの輝勇石。そして虹色の剣。

それらはトン・ソォークを倒すための唯一の光であること。

そして青の輝勇石タトゥミのこと 緑の輝勇石ヒヨのこと。

今まで歩んできた全てをリュールに話した。



サ 「私ね 今までは旅に出ることや闘うことは本人の意思に任せてきたの。
   でもリュールはすでに私たちと同じ道を歩いてる。だから一緒に来て。」

リ 「・・・・断る。 俺に仲間は必要ない。
   俺は今まで何事も一人でやってきた。これからも俺は俺のスタイルでやらせてもらう。
   あんた達はあんた達でやればいい。」

サ 「一人じゃトン・ソォークを倒すことは出来ないんだよ?」

リ 「そんなのはやってみなくてはわからないだろうが!
   俺は自分一人の力で奴を倒したいんだ。」

サ 「何よ! 馬鹿みたいにかっこつけて!」

リ 「あ? んだと こら! もっぺん言ってみろ!」

サ 「何度でも言ってやるわ。 バーカバーカぉ馬鹿のかっこつけ!
   自分一人の力で倒したい? そんなの自己満足に過ぎないじゃないの!」

リ 「違うっ! 俺は妹の仇をッ!!」

サ 「本当にそう思ってるのなら・・・・
   今まで貫いてきたものを捨ててまでも 私たちと一緒に来るはずよ。」

リ 「・・・っ。」

サ 「力を合わせればトン・ソォークを倒せるかも知れないんだよ?
   妹さんだってそれを願ってるはず。
   だって・・・ その輝勇石は妹さんから託されたものなんだから・・・。」

リ 「妹も・・・・・・」



リュールは再び輝勇石を手に取り見つめた。

何より愛しかった妹を見つめるかのように。



一人では無理?

頭の片隅でそう思ったこともあった。

しかし 今まで自分が積み重ねてきたもの

そしてトン・ソォークへの怒りを奮い立たせ

そんな考えは打ち消してきた。

誰にも邪魔はさせない。

おまえの仇は 俺が取る。俺だけの力で奴を倒す。

例えその結果 俺が死ぬことになっても構わない。

この考えは 間違っているのか・・・・



お兄ちゃん。 迷ってるの?

私はいつもお兄ちゃんの味方だから。

でも あまり一人で頑張りすぎないで・・・。

お兄ちゃんが本当に今やるべきことは何なのか 考えて・・・。




握り締めた輝勇石から そう聞こえた気がした。



それとリンクするようにサラシャの声がリュールに届く。



サ 「リュールにしか出来ないことがあるんだよ。それをちゃんと考えて。」

リ 「ふっ。」



いつのまにか消えていた煙草を吐き捨て リュールはうつむきながら笑みを浮かべる。

そして 何かが吹っ切れたように空を見上げ 息を吐くようにサラシャに言った。



リ 「わかった。 一緒に行こう。」

サ 「そうこなくっちゃ!」

リ 「だけど一つ言っておく。 俺は仲間とかそういうのには興味がない。
   ただ妹から託されたこの輝勇石の使命を果たすために行くだけだ。」

サ 「うん。それで十分だよ。」

リ 「しかし まぁ あんたに丸め込まれるとはな。一流の賞金稼ぎの名が泣くぜ。」

サ 「丸め込むって失礼ね。 諭すって言って頂戴。
   それにね私にはサラシャという可愛い名前があるんです−!」

リ 「わかったわかった。あ、それから300万ゼニーは後でキッチリ頂くからな。」

サ 「契約は契約だものね。 そのかわりロクスがいない分しっかり護衛して
   ちゃんとドラゴ王国まで連れてってね。」

リ 「ふん。 お安い御用だ サラシャ。」



姫と賞金稼ぎ。

そんな二人の間に 共にトン・ソォークを倒すという一つの志が出来た。









ドラゴ王国―――――――



マ 「ここは・・・? うっ・・・」



ひんやりとした硬い感触に目を覚ますと同時に また激しい頭痛がマオンを襲う。

痛みをこらえマオンは体を起こして 辺りを見回した。

薄暗く湿った空気。

まだぼやける視界の中に見える鉄格子。

ここはもう何年も使われることのなかった 城の地下牢。

なぜ 自分がこんなところに?

確か黒い霧が王国を包んで・・・・



? 「もう起きてしまったか。」



記憶が途切れる前のことを思い出すマオンに

鉄格子の向こうから 話しかける者がいた。



マ 「そこにいるのは 誰!?」

? 「トン・ソォーク様に仕える参謀の一人。我が名はトン・カチ。」

マ 「私を捕らえてどうする気? つーか、ここから出せ このやろう!」

カチ「威勢のいい姫さんだブ。 よほど精神が強いんだブ。
   黒の霧を浴びても魔物にならないとは。」

マ 「何よそれ? どういうこと? ・・・・・まさかあの霧。」

カチ「察しの通りだブ。 普通の人間なら霧を浴びれば身体に闇が巣食って魔物になるブ。
   見た目は人間でも中身は魔物。 この国はトン・ソォーク様の手に落ちたんだブ!」

マ 「そ、そんな・・・」

カチ「悲しむことはない。お前もすぐに仲間入りだブ。」



そう言うとトン・カチは気味悪い笑みを浮かべて 香炉を取り出した。

ようやく視界がはっきりとしてきたマオンはそれを見て 危険信号をすぐに察知した。

が 気づいた時には すでに遅かった。

そこから溢れでる黒い煙。 それは王国を覆った黒い霧と同じもの。

瞬く間にマオンを取り巻き マオンは膝から崩れ落ちた。

倒れまいと鉄格子を握る手の力も だんだんと弱くなっていく。

ついには 冷たい床に横たわってしまった。

薄れゆく意識の中で 遠くトン・カチの声が聞こえる。



カチ「魔物になったお前には あいつらを討つ使命を与えてやるブ。」



ここで意識を失くすわけにはいかない。

サラシャに伝えなければいけないことがある。



マオンは 身体を蝕む闇と闘いながら

護身用に持っていたナイフで 自分の手のひらを切りつけた。

流れ出す血と共に鋭い痛みが走り その痛みに耐えながら意識を手放すまいとしていた。



サラシャ早く・・・ 私の意識があるうちに・・・











    


TOP