〜 姫のもとへ 〜



サ  「マ・・オン?」



サラシャが呼びかけても マオンはうつむいたままで返事をしない。



カチ 「無駄だ。 マオンも黒い霧でとっくに魔物の仲間入りだブ。
    しかし 魔物になったとてお前はマオンに手を出せまい。
    お前は ここでこのままマオンに殺られるんだブ。
    さぁ マオン。 殺ってしまえ!」



トン・カチの声にマオンがゆっくりと顔を上げて反応する。

そして真っ直ぐにサラシャを見据えた。

サラシャの額に一筋の汗が流れ リュールは背中に背負った大剣に手をかける。



リ  「どうするんだ サラシャ? 殺るのか?」

サ  「どうする・・・って。 そんなの わから・・・ない・・・。」



相手はマオン。

マオンが魔物になっただなんて 信じたくない。

殺せるはずもない。



サラシャはその場から一歩も動けず ただマオンを見つめることしか出来なかった。



カチ 「残念だったな サラシャ姫。 お前はマオンの手にかかって死ぬんだブ。」



トン・カチがそのまま大きく高笑いを上げると

マオンは懐から血に染まった短剣を取り出した。



マ  「死ぬのは・・・ お前だッ!!」



取り出した短剣はサラシャでなく 鈍い音を立てトン・カチの横腹に刺さる。



カチ 「な、なに!? お前 まだ意識が!?」

マ  「魔物になったふりでもしないと 牢獄から出れないと思ったからね。
    アタシをあんまり甘くみないでね。
    何度も闇に堕ちそうになり その度に新しい痛みに耐え自分をコントロールしたわ。」



広げたマオンの両手には ナイフで切り刻んだ痛々しい跡が残っていた。



サ  「マオン・・・ 無事だったのね!」

マ  「なんとかね。 てか、サラシャ 待たせ・・・ すぎ・・・。」



強い笑みを浮かべたかと思うと

マオンはそのままサラシャへともたれかかるように倒れこむ。

意識を保つために張り詰めていたマオンの精神の糸が

サラシャを見て安心したと同時に切れたのだろう。



サ  「マオン!? しっかりして!」

マ  「まだ・・・ 大丈夫よ。」



サラシャに抱きかかえられながら 顔を上げるマオン。

しかし その顔はとても大丈夫とは言えるものでなかった。

心配げに覗き込むサラシャ。

そんな二人に 黒い影が覆いかぶさる。



カチ 「おのれ! こしゃくな真似を。 だが、生きてこの城を出れると思うなブ。
    こうなったら我自らの手で死に至らしめてやるブ!」



分厚い脂肪で覆われたトン・カチの体は マオンの刺した傷くらいでは到底致命傷にもならず

どでかい斧を二人に向かって 振り下ろした。

しかし 瞬時に間に入ったリュールが大剣でそれを受け止める。



リ  「サラシャ。ここは俺に任せてマオン姫を連れて先に逃げろ。すぐに片付けて追いかける。」

サ  「でも、リュール!」

リ  「300万ゼニー分 きっちり働いてやるぜ。 さぁ、行け!」



リュールは力一杯 トン・カチを払い倒した。

そのすきにサラシャはマオンを肩に抱えて その場を走り去る。

リュールの背中に言葉をかけて・・・





サ  「裏口で待ってるから! 必ず、必ず来てよ!」





リュールは 背中を向けたまま 手を上げてそれに答えた。





カチ 「くそ・・・ 逃がすか!」





重い図体を起こし 走り去るサラシャを追おうとするトン・カチ。

それを阻止するように 大剣を構え立ちふさがるリュール。





リ  「お前の相手はこの俺だ。 光栄に思えよ? この俺の手にかかれることをな。」

カチ 「人間如きが 戯れを・・・」

リ  「てめぇらの面見てると クソむかつくんだよ! 俺様の剣技に酔いなっ!」























サラシャより少し遅れた頃 ドラゴ王国東門を抜け 街を歩くロクス達。

破壊された東門は すでに魔物に襲われたことを告げていた。



ヒ  「やっぱりここにも魔物が来ていたか・・・」

タ  「でも 街にはほとんど被害がなかったのね。。」

フ  「ホントだよな。みんなめちゃめちゃ普通にしてんじゃん。」

ロ  「それも妙だな。 とにかく城に行ってマオン姫に会おう。サラシャのことも気になる。」





賞金稼ぎとの行方はわかるはずもなく

無事ここにたどり着いていることを願うしかなかった。







ヒ  「チキン王国のヒヨッティだ。 マオン姫にお通し願いたい。」

門兵 「どうぞ、ヒヨッティ王子。」



サラシャと同じように ヒヨの顔パスで門を抜けると

幽閉するかのように バタンと勢いよく扉が閉まる。



フ  「うわっ! なんだよ 感じワリー。」

タ  「それより なんだか城の中が騒がしいわ。」

モ  「もっさーっ!!」



ヒヨの肩でけたたましく警戒を告げるもっさー。



ヒ  「どうした、もっさー? まさか 城の中に魔物が!?」

ロ  「急ぐぞッ!!」



あきらかに不審な態度の門兵を気にしている暇もなく 4人は城へと走った。

そして、城の中に入るや否や 兵士や女中が襲いかかってきた。



ドラゴ王国に対しに剣や魔法を向けることは出来ない。

人を相手に闘うわけにもいかず 4人はとにかく避けるように城内を逃げた。



フ  「んだよ! どうなってんだ!?」

タ  「なぜ人がアタクシ達を?」

ロ  「操られているのかも知れん。」

ヒ  「とにかくマオンを探そう!」











それと同じ頃 リュールはトン・カチを倒し城の中を彷徨っていた。



リ  「つーか 裏口ってどこだよ!」



サラシャを追って走るリュール。

しかし 城内の構造を全く知らないので あっちこっちぐるぐるまいまいしていた。

そして 廊下を曲がったところでロクス達と鉢合わせになった。



ヒ  「あっ! お前はあの時の賞金稼ぎ!」

ロ  「何!? 貴様かっ!」



ロクスは剣を抜き 有無を言わさずリュ―ルに斬りかかる。

しかし リュールも腕の立つ一流の賞金稼ぎ。

ロクスの剣を寸でのところで受け止めた。



リ  「そう熱くなるな・・・ ぉ世話係りさんよ。」

ロ  「護衛隊長だ! 貴様 タダで済まされると思うなよ。」



交わる剣ごしに睨み合い 今まで抑えていた怒りを露にするロクス。

しかも またぉ世話係りと言われた。



リ  「一度手合わせ願いたいと思っていたが 今はそれどころじゃねぇんだよ。」

ロ  「サラシャはどこだ?」

リ  「俺も今サラシャを探してんだよ。 裏口がどこか教えてもらえるとありがたいんだが。」

ロ  「・・・・どういうことだ?」

リ  「こうゆうこと と、言えば話は早いか。」



そう言い リュールは赤く輝く輝勇石を取り出し見せた。



    







    


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