トン・カチをリュールに任せ マオンを連れ裏口に向かうサラシャ。
しかし城内には サラシャ達の命を狙う兵士らが溢れ
そうすんなりと裏口にたどり着けそうにない。
自分たちを追ってくる足音、気配を感じるたびに 柱や物陰に身を潜め
追手の目から逃れながら少しずつ裏口に向かった。
そうしているうちにも マオンの体がみるみるうちに衰弱していく。
走ることはおろか 自分の力で立つことさえも出来なくなっていた。
血の気も失せ 苦しそうに肩で息をするマオンは
サラシャに肩を借りて なんとか歩ける状態だった。
マ 「サラシャ 聞いて・・・。 黄色の輝勇石がある場所がわかったの・・・。」
サ 「えっ!?」
マ 「忍者の・・・里に 古くから奉られ・・・ うっ・・・」
サ 「マオン!?」
そこまで言うと マオンはガクリと膝から崩れ落ちた。
マ 「もう ムリ・・・みたい。」
サ 「しっかりして マオン!」
マ 「アタシの身体には闇が巣食ってる・・・。 そろそろ限界・・・」
サ 「嫌だ!そんなこと言わないで!」
マ 「サラシャ アタシのことはいいから 早く・・・逃げて。
伝えたいことは伝えたから アタシはもうどうなっても・・・いい・・・」
サ 「何言ってるのよ! 絶対一緒に連れて行くっ!」
しかしマオンはそのまま床に倒れ込み 返事をすることはなかった。
輝勇石のことを伝える為に 必死になってくれたマオン。
手の傷を見ると その傷と同じだけサラシャの心にも痛みが走る。
そして 瞳からはとめどなく涙が溢れた。
サ 「マオンは 絶対魔物になんてならないッ!」
サラシャは 思いを吐き出すように言うと
動かなくなったマオンを背中に担ぎ裏口へと歩いた。
やっとの思いで裏口にたどり着いたが
そこにはすでに魔物達が待ち構えていた。
後戻りをしようと思うにも すぐに後ろにも回られ
あっと言う間に囲まれてしまった。
逃げ場を失い ゴクリと息を呑むサラシャ。
どうする? この場を どうやってしのぐ!?
サ 「ワタシ サラシャ チガウ タダノ トオリスガリネ。 ヒトチガイ アルヨ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
いや そんなの通用するわけないし。
マ 「サ・・ラシャ・・・」
サ 「マオン? 気がついたの?」
マ 「アタシから 早く離れてっ!!」
サ 「な、なんでっ?」
気付いたかと思えば いきなりサラシャを突き飛ばしたマオン。
ワケがわからずマオンに一歩近づくと
マオンはナイフを手にし サラシャを切り付けた。
サラシャの頬に熱い血が滴り 髪がハラハラと滑り落ちる。
サ 「マオ・・・ン。 どうして・・・?」
マ 「ごめ・・サラシャ・・・・ うぅっ・・・」
周りを魔物に囲まれてしまったせいで マオンの中の闇がそれに共鳴し始めた。
頭の中に 殺せ 殺せ という闇の声が響く。
自分の意識とは別に サラシャにナイフを向ける。
それを必死で抑え 精神のギリギリのところで闇と闘うマオン。
このままじゃ アタシはサラシャを殺してしまう。
世界を救えるたった一つの光を 奪ってしまう。
マ 「サラシャ。 必ず世界を救ってね・・・。 じゃないと 許さないから。」
マオンは笑顔を向けると 最後の力を振り絞り自分の胸へとナイフを突き立てた。
ドサリと倒れた床に 流れ出るマオンの血が広がる。
サ 「マオン―ッ!!」
サラシャは座り込んで マオンを抱き起こす。
グッタリとなったその身体から 序々に体温がなくなっていく。
サ 「いやだ、死なないで! 今、治癒を・・・・」
しかし 魔物に囲まれている上に マオンの死を恐れるサラシャに
治癒能力を使える程の集中が出来るはずもなく。
そしてこのまま 自分も魔物に殺されてしまうという恐怖が押し寄せ
サラシャには もう成す術がなかった。
こんな時 どうすればいいの・・・?
私は どうしたらいいの・・・!?
そんなサラシャの頭に かすかにぉ姫様教育の情景がよぎる ―――――
シ 「姫様。 ちゃんと聞いておられますか?」
サ 「はーい、シギュマ先生。 聞いてます 適当に。」
ロ 「サラシャ。 真面目に学べ。」
シ 「そうですぞ 大事なことなのですから。
姫様にはいろいろな対処法を学んで頂かないと・・・」
サ 「一人の時に絶体絶命 こりゃ大変って時にどうするかってことしょ?」
シ 「そうです。 姫様ならどうなさいますか?」
サ 「う〜ん そうねぇ。 運を天に任せる!」
シ 「そんな適当な答えではいけません!」
サ 「だって・・・ その時にならないとわからないよ。」
シ 「なってからでは 遅いのですぞ?」
ロ 「フッ。 簡単なコトだ。 俺の名を呼べばいい。」
シ 「またロクスまでそんな適当なことを言って・・・。」
ロ 「いや シギュマ。 適当ではない。 護衛隊長として当然のことだからな。」
サ 「そか。 それなら簡単だね。」
ロ 「あぁ。 どこにいても駆けつけてやる。」
俺の名を呼べ
サラシャはマオンを抱く腕に力を込め ギュッと目を閉じてその名を呼んだ。
サ 「ロクスッ!!」
その瞬間 周りにいた魔物達の叫び声が聞こえ
次に 久しぶりと思える声が耳に届いた。
ロ 「呼んだか?」
来た! ぉ世話係り 護衛隊長!
目を開けて見上げると 背中越しに笑みを見せるロクスの姿。
サ 「遅いよッ!」
ロ 「すまない。」
サ 「ううん。 許す。」
と言うサラシャの涙交じりの声を聞くと ロクスは残りの魔物も次々と斬り倒していった。
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