サ 「良かった。 なんとか傷はふさがった。 後は意識が戻るのを待つだけ。」
ロクスが来てくれたおかげで サラシャはマオンの治癒に専念することが出来た。
顔色にも赤みが戻り ドクンドクンと力強く波打つ鼓動を聞いてサラシャはホッとする。
その様子を傍らで見守るロクス
ロ 「自分の頬の傷を治すことも忘れるなよ。」
サ 「うん。これじゃ美貌が30%減だしね。」
ロ 「 (・・・だから 自分で言うな)
それより サラシャ。 マオン姫のことにしてもリュールのことにしても
一人でよく頑張ったな。」
サ 「リュール! そう、リュールが来ないよッ! 裏口て待ってるって言ったのに。
って あれ? どうしてロクスがリュールを知ってるの?」
ロ 「心配しなくてもあいつは無事だ。 迷子になってるところに出くわした。」
赤の輝勇石のこと。 マオン姫のこと。
トン・カチによって この国の住民が魔物に変えられてしまったこと。
ロクスはリュールから今までのいきさつを聞いたと話した。
そして サラシャが裏口に向かったと知り 兵士達の相手を皆に任せ
ロクスだけ先にここへやってきたのだった。
サ 「そか。良かった無事でいてくれて。 それに みんなも。」
ロ 「あぁ、もうそろそろここへやって来るだろう。」
少しすると足音と共に皆の声が聞こえてきた。
タ 「だから殺しちゃダメだっていってるでしょう!」
リ 「うるせぇよ。 姿形は人間でも中身は魔物。 手加減する必要はない!」
タ 「リュールには情けってものがないの!?」
リ 「ないな。 そんなものは邪魔になるだけだ。」
タ 「んまっ! たいそうなことを言ってくれるわね!」
フ 「ま、まぁ 落ち着けっての。」
タ 「フジールは黙ってらっしゃい!」
ヒ 「とりあえず結果としては誰も殺してないんだから良しとして・・・
ほら あそこの角を曲がれば裏口だよ。」
ヒヨの案内で裏口まで来くると 一斉にサラシャの元へ駆け寄った。
サラシャの無事を確認し安堵した4人は サラシャの腕の中で眠るマオンに気付く。
タ 「・・・その方がマオン姫?」
ヒ 「ま、まさか・・・ マオン・・・」
サ 「大丈夫だよヒヨ。 今、治癒をしたところだから。」
ヒ 「そうか 良かった。」
リ 「で、どうするんだ? ずっとここにいるわけにもいかねぇだろ?」
ロ 「あぁ。 マオン姫も安全な所で休ませてやらねば。」
ヒ 「いったんチキン王国へ戻ろうか?」
ロ 「そうだな。それがいい。」
タ 「だけどこの国を出るには街を通らないといけないわ。街には魔物となった民衆が・・・」
タトゥミの言葉に 全員が黙り込んだ。
民衆の数は兵士とは比べ物にならない。
たとえ 闇に捕らわれていたとしても下手に手出しをすることは出来ない。
マオンを連れて国を出るのは 容易ではないだろう。
リ 「うだうだ言ってても仕方ない。 ここは一気に突っ切る・・・か。」
リュールが煙草に火をつけそう言うと
皆、覚悟を決めたようにコクリと頷いた。
ロ 「サラシャ。マオン姫を俺の背中へ。」
サ 「わかった。」
ロクスの背にマオンを乗せ
裏口を出ようとすると
? 「そこにいるのは誰だ! トン・ソォークの手下とあらば叩き斬る!」
サ 「えっ・・? あの声は・・・?」
サラシャが聞き覚えのある声に振り向くと
そこには ラブチュ王国の第5騎士団女隊長 ユーンの姿があった。
サ 「ユーン!?」
ユ 「サラシャ様・・・? それにロクス隊長も!?」
サラシャに気付くと ユーンは剣を下げて一礼をした。
ユ 「ご無礼をお許し下さい。 まさか このような場所でお会いできるとは。」
ロ 「ユーン、何故お前がここに?」
ユ 「国王様より命を仰せつかってここへ参りました。」
サ 「お父様から?」
ユ 「はい。」
最近になって 南の大陸にも魔物が出現するようになり
闇の影響も見え始めた。
そして 南の大陸よりも 闇の影響が酷いと言われている北の大陸。
ドラゴ王国を心配したトティ国王は 第5騎士団を援軍に向かわせたのだった。
ロ 「そうか。 だが ドラゴ王国はすでに魔物に支配されてしまった。」
ユ 「えぇ そのようですね。 でも大丈夫です。
もしもの為にとシギュマ先生が持たせてくれたものが役に立ちましたから。」
援軍にくるのが一歩遅かった。 そう言い切れる状態で
闇に支配されたドラゴ王国の兵士や民衆をユーンも見たはず。
それなのに ユーンは落ち着いた様子だった。
ユ 「以前、ラブチュ王国の隣町で黒い霧によって人々が魔物にされてしまい
その時 シギュマ先生が体内に入った闇を浄化させる魔除薬をお作りになられたのです。
おかげで隣町は救われました。
ドラゴ王国の状況を見た時 隣町の状況と酷似していたので その魔除薬を使いました。」
ロ 「さすが ラブチュ王国が誇る智のシギュマだな。」
サ 「じゃあ・・・ ドラゴ王国のみんなは元に戻ったってこと?」
ユ 「はい。 もう心配御無用ですよサラシャ様。
残っていた魔物も 我ら第5騎士団で排除致しました。」
サ 「ご苦労様 ユーン。」
ドラゴ王国が平常に戻ったのならば マオンを連れてわざわざチキン王国まで行く必要はない。
それに 再び魔物が攻めてきたとしても
統率力に長けているユーンが率いる第5騎士団がいれば何も心配することはないだろう。
つーわけで マオンを部屋に寝かせてマオンの意識が戻るまで
マオンの傍に付いていると言ったヒヨ(+もっさー)を残し
サラシャ達は大広間でしばしの休息をとる事にした。
ユ 「ロクス隊長。 話があるのですが 少しお時間を頂けますか?」
ロ 「あぁ 構わないが。」
ユ 「ここではなんですから・・・ 向こうで。」
ユーンはサラシャに気付かれないよう ロクスを部屋の外へ連れ出した。
どうやらサラシャに聞かれては 微妙にちょっと何気にまずい話らしい。
周りに誰もいないことを確認し それでも少し小さめの声でユーンはロクスに問う。
ユ 「輝勇石のほうはどうなってますか?」
ロ 「青 緑 赤を手に入れ 黄の輝勇石の場所もわかった。
古くから忍者の里に奉られているそうだ。
おそらく忍者の中にその戦士もいるだろう。」
ユ 「これで4つ。 いえ 正確には5つ。」
ロ 「そうだな・・・。」
ユ 「"そろそろ話しておくべきだろう。" トティ国王のお言葉です。」
ロ 「国王が? そうか・・・ わかった。」
ロクスには ずっと自分の胸の中に秘めていることが2つあった。
それは ラブチュ王国でも限られた者にしか知らされていない
サラシャのこと と ロクス自身のこと。
旅を始めて幾日・・・
輝勇石の仲間を見つけ いつサラシャに話すべきかと時期を伺っていたが
話せばただ輝勇石を集めるだけの旅ではなくなる。
果たして今のサラシャにそれを受け入れられるのか・・・。
だが、それが国王の言葉となれば 従うしかない。
ロクスは自分の運命と共にある石を握り
旅の本当の意味をサラシャに伝える決心をした。
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