〜 剣の重み 〜



マオンにもらった地図を片手に忍者の里に向かう一行。



最短ルートを確認しながら 適当な場所で休憩を取る。

適当といっても  もちろん魔物の目が届きにくい場所を選んでだが・・・。



ヒヨを先頭にして もっさーに脅えながらも隣を歩くフジール。

その後ろで サラシャとタトゥミは相変わらず話に夢中で

ロクスとリュールは それより少し離れて歩いていた。



ロ 「皆に折り入って話があるんだが・・・。」



今まで静かに後方で歩いていたロクスの言葉に 皆が足を止めて振り向いた。



タ 「折り入った話?」

フ 「なんだ なんだ?」

サ 「今すぐ? もうすぐ野営ポイントみたいだけどそこじゃダメ? ね、ヒヨ?」

ヒ 「あ、うん。 ポイントまでそう時間はかからないと思うけど。」

ロ 「では そうさせてもらうか。 足止めさせてすまなかったな。」



サ 「んじゃ レッツラ・ゴウ♪ 今日の夕飯担当はタトゥミという方向で。」

タ 「えっ!? (どういう流れでその方向になるのかしら? 汗)」



そう言って再び歩き出したサラシャの後姿を見て

ロクスの中に少しの葛藤が生まれた。


やはりまだ早いのではないかと・・・。

確かにこの旅に出て 成長はしている。

しかし ずっと知らされることのなかった定めとも言える運命。

サラシャに選択肢はない。

自分が背負うべきものの重さに耐える事が出来るだろうか。



そして 護衛隊長でもあると共に 俺がここにいる意味・・・



リ 「おい。」

ロ 「・・・・・。」

リ 「聞いてんのか? ぉ世話係り。」

ロ 「ロクスと名前で呼べ。 それに、何度も言うがぉ世話係りではなく護衛隊長だ。」

リ 「どっちでも似たようなもんだろ。」

ロ 「 (いや、そこが重要なんだっ!!)
   で なんだ?」

リ 「もし 俺が輝勇石の戦士でなく サラシャをさらったまま危害を加えてたとしたら
   俺を殺していたか?」

ロ 「あぁ。 確実にな。」

リ 「できるのか?あんなよわっちぃトマト魔軍団にひるんでたくせに・・・」

ロ 「なんだと!トマトじゃなければな!たとえ竜の軍団でもやられはしない!」

リ 「ほ〜ぅ、じゃ・・・『ただの』賞金稼ぎの俺なんかには、負けるわけがないと?」

ロ 「当然だ。 たとえ相手が『千人斬り』のリュールであってもだ。
   お前とは背負ってるものの重さが違う。」

リ 「へぇ。 その名を知っていたか。 それは光栄なこった。
   しかし 背負ってる重さが違うとは聞き捨てならねーな。
   勝手にわかった気でいるんじゃねぇよっ!!」



リュールはおもむろに剣を抜き ロクスへと斬りかかった。

瞬時に反応したロクスも剣を抜き それを受け止める。



妹への思いだけで ここまで闘ってきた剣。

サラシャを守るためだけに 闘ってきた剣。



二本の剣が激しい音を立てて 火花を散らす。





その音に 何事が起こったと振り向くサラシャ達の視界には

ロクスとリュールが剣を交えて 双方一歩も引くことなく睨み合う姿があった。



フ 「って 何やってんだ!? 喧嘩か!?」

ヒ 「仲間に剣を向けてどうするんだよ!」



リ 「ふっ。 仲間? 勘違いするなよ。
   俺はただ自分の使命を果たす為にここにいるだけだ。」



リュールは 仲間だということを否定し 更にロクスに斬りかかった。

ロクスもそれに返すように 剣を振りかざす。



サ 「ちょっと 二人とも止めな・・・」

タ 「サラシャ。 ほおっておきない。」



二人を止めようとするサラシャに

タトゥミは横から肩にポンと手を置きそれを制した。



サ 「え!? どうして?」

タ 「あの二人・・・。 剣を通して何か確かめ合ってるように見えるわ。
   男って馬鹿な生き物でね。 あーでもしないとわかりあえない時もあるのよ。
   だから やりたいように納得するまでやらせておきなさい。」

サ 「でも・・・。」



それでも心配気に二人を見るサラシャに タトゥミはふわりと微笑みかけた。



タ 「大丈夫よ。 いざとなったら熱が冷めるように二人とも氷漬けにしてあげるから♪」

ヒ・フ 「( いや それもどうかと! 氷の微笑!?) 」

サ 「そか。 それもそうだね♪」

ヒ・フ 「( って 納得すんのかッ!) 」



4人が見守る中 ロクスとリュールの激しい攻防戦が繰り広げられ

剣の交じり合う音だけが 辺りに響く。

そして二人は一旦間合いを取り 互いを見据えた。



ロクスは思う。

荒々しい太刀筋は おそらく自己流で磨き上げたものだ。

ゆえにその太刀筋は不規則で 相手にとって予測不能となる。

それに加え あの大剣を軽々と振り回す力とスピード。

この実力はかなりのものだ。 『千人斬り』の名もダテじゃない。



そして リュールは思う。

完璧とも言える剣の扱い。 相手の動きを見抜く洞察力。

そして何よりも隙がない。

一瞬でも気を抜けば 確実にそこをついてくるだろう。

さすが 南の大陸一の武を誇ると言われるだけはある。



リ 「遠慮するなよ ロクス。 本気で来い。」

ロ 「おまえのほうこそな。」



次の瞬間 二人は間合いに入り ロクスはリュールの首元へ リュールはロクスの胸へ

閃光とも思える速さで剣を走らせた。







お互いに最後の一撃を放ち 辺りはしんと静まり返る。



あまりの迫力に見ていた4人は 瞬きも出来ずにいた。



フ 「ど、どっちが勝ったんだ!? 早くてわかんなかったぞ。」

タ 「・・・五分。」

ヒ 「二人ともギリギリのところで交わした。さすが・・・。」



ロ 「いい腕だ。これほどまでとは・・・ 危うく心臓を一突きだったぜ。
   よほど大切な何かを背負ってきたんだな・・・。」

リ 「そうかい。 ありがとよ。 わかればいい。
   こっちももう少しで 首を飛ばされるところだったがな。」



そして フッと笑みを漏らす二人の前に輝勇石がコロコロと転がった。



先程のはずみでリュールの首飾りが切れたらしい。



リ 「っと、これは・・・  ん?」



リュールは大切な輝勇石を拾い上げようと地面に手を伸ばす。

が・・・  そこにあるものを見て手を止めた。



リ 「これは!?」

サ 「輝勇石が・・・ 二つ・・・・?」



赤の輝勇石と ここにあるはずもない輝勇石。

赤の輝勇石は当然リュールのもの。

じゃあ もう片方の輝勇石は・・・!?

そして、はい! カメラさんズームアップ!(何)



ロ 「・・・話したいと言ったのは このことだ。」



それは リュールに斬り裂かれた服の懐から落ちてしまった輝勇石。

ゆっくりと拾い上げた輝勇石はロクスの手の中で 紫の光を放っていた。







    


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