それぞれが 有意義な夜を過ごした賞金稼ぎの街も一日でおさらば。
今日もお天と様の 日が昇る。
ロ 「さて そろそろ出発するか」
サ 「ちょっと待って。フジールがいないんだけど?」
ヒ 「そう言えば さっき買い物に行くって言ってた」
サ 「もぅー。 規律を乱す奴はグランド20周よ!」
またもサラシャが個人的趣味のネタでプンスカしてると
フジールが慌てて戻ってきた。
フ 「悪ぃ悪ぃ」
サ 「もう 何処行ってたのよ?」
フ 「うん。ちょっと・・・」
リ 「じゃあ 行くとするか」
全員揃ったところで街を出て 再び忍者の里を目指して歩き出す。
幸いにも魔物に出くわすことなく
昨日 十分に身体を癒したおかげか 序々に険しくなる道も サクサクと進むことが出来た。
すっかり日も暮れて 野営の火を囲むと ヒヨが地図を確認する。
ヒ 「この分だと 明日には忍者の里に着けそうだ」
サ 「ほんと? あと、もうひとふんばりだね」
リ 「じゃ、明日に備えて今日はもう休むとするか」
タ 「そうね。そして なるべく早くここを発ちましょう」
フ 「また野宿かぁ。ま、仕方ないけど・・・」
ロ 「だったら最初から言うな」
ヒ 「あ、そうそう。ふかふかベットとまではいかないけど 昨日いいものを作ったんだ」
そう言うと ヒヨはリュックの中から何かを取り出した。
握った手を開くと 小さなカプセルがあり
それにはスイッチが付いていて カチッと音を立てて押すと
なんと なんと! これはビックリ!!
おっきなテントに早変わり!!!
ヒ 「名づけて ほよぽよカプセル!(50%パクリ)」
フ 「すげぇ〜!」
リ 「さすがはチキン王国の王子。機会の発明はお手の物ってか」
サ 「くそ素晴らしいわ!」
ロ 「だから くそとか言うな・・・」
ヒ 「これで少しはゆっくりと眠れるだろ?」
タ 「えぇ。とてもありがたいわ」
ヒヨの発明品ほよぽよカプセルに 感動する者 褒める者 感謝する者
そして約一名 お姫さんをツッコむ者。(ご苦労さんです)
ドラゴ王国を出て数日。 明日にはやっと忍者の里へ到着することが出来る。
テントの出現ですっかり気分も高まり
このまま何事もなく すんなりと黄色の輝勇石もみつかる。
そんな風にさえ思えた時だった。
突然巻き起こった風に さっきまで囲んでいた火がかき消され 辺り一面闇に包まれた。
そして 視界を奪われたサラシャ達の周りに 禍々しい空気が漂う。
その空気の中 即座に気配を察知したロクスとリュールが同時に剣に手をかけた。
ロ 「サラシャ。そこを動くなよ」
サ 「え? な、なに!?」
リ 「ちっ。 奴ら 今まで気配を消していやがったのか」
タ 「今までのザコとはわけが違うようね」
フ 「まさか・・・ 俺たち・・・」
ヒ 「あぁ。 完全に魔物に囲まれているみたいだね」
タトゥミがフレイムで再び火をともすと 通常の狼と比にはならない大きさの魔物が
牙をむきジリジリと詰め寄って来ていた。
フジールがゴクリと息を飲み 思わず一歩後ずさる。
フ 「で、でかいって。 てか、初めて見る魔物だぞ」
タ 「トン・ソォークはあらゆるものを魔物化させると聞くわ」
リ 「さしずめ狩に見立てて 俺たちを追っていたというわけか」
ロ 「全部で10匹。 リュール 何匹いける?」
リ 「そうだな。3匹・・・ いや4匹か」
ヒ 「もっさー 何匹いける?」
モ 「も? もっさ〜・・・」
ヒ 「そっか。さすがに自分より大きいものは食べれないか」
モ 「当然もさ!!(心の叫び)」
サ 「私にいい考えがあるわ」
ロ 「サラシャ あまり不用意に前に出るな」
サ 「大丈夫 私に任せて」
やけに自信たっぷりで 何をするのかと思えば
サラシャは膝をついてかがみ 魔物に向かって手を差し出した。
サ 「よぉ〜しよし。いい子だねぇ〜。可愛いねぇ〜。よぉしよし♪」
ガルルー! グルルー!
どうやら 手なずけようとしてたらしいが 逆に逆撫でしたようだ。
フ 「何やってんだよ、サラシャー! 逆効果じゃん!」
サ 「あれ? おかしいなぁ・・・。 動物と接する時は同じ目線でって言ってたのに」
フ 「誰がだよ!?」
サ 「動物王国のムッツン・ゴロウ国王」
ロ 「だからって今それを実行するな。 それにあそこの国王は
それらしいことを言いながらも ライオンに指を取られたそうだ」
サ 「えぇー!そうなの!? 何だよぅ 動物の神様だと思っていたのに」
てか サラシャのほうが ほんとヤレヤレなお姫様である。
タ 「サラシャ 早く後ろに下がって」
今にも飛び掛りそうだった魔物に タトゥミが威嚇のフレイムを放つ。
そして 周りを取り囲んでいた魔物の陣形が少し崩れた隙を見て リュールが飛び出す。
リ 「このまま固まっていたら 一斉攻撃にあう! とりあえず散れ!」
ヒ 「了解! 行くぞ もっさー!」
リュールの合図で それぞれが四方に動くと それを追うように魔物も散らばり始める。
素早い魔物に 少々苦戦しながらも 確実に一匹ずつ仕留めていくリュール達。
今までと違い 手ごわい魔物相手に無傷での戦闘といかなかったが 傷を負えば
即座にサラシャが治癒を行った。
遠距離での治癒は かなりの集中力を要するが
この戦闘の最中 それを可能にしているのはロクスの鉄壁なる守りだった。
サラシャに襲いかかろうものなら 容赦なく真っ二つに切り捨て
誰とてサラシャに近づくことは出来ない。
サラシャにとって一番安全といえる場所 これが噂のロクスゾーンだ。
しかし そのロクスゾーンから 急にサラシャが飛び出した。
ロ 「サラシャ! 動くなと言っただろう!」
サ 「だって フジールがっ!」
引き止めるロクスを振り切り 走り出すサラシャの先には
魔物に圧し掛かられているフジールの姿があった。
短剣一つで 必死に抵抗しているが 今にも首元に喰いつかれそうな勢いだ。
ロ 「ちっ、あの馬鹿が」
そして 走り出したサラシャにも 別の魔物が牙をむいて襲い掛かり
サラシャを追っていたロクスが ガキンと鈍い音を立てて剣でその牙を防ぐ。
その間に サラシャはフジールの元へ駆け寄り フジールを襲う魔物に蹴りを一発浴びせた。
サ 「マオン直伝回し蹴りー! どらぁ!!」 (いや どらぁって。)
サラシャの回し蹴りがクリーンヒットして 魔物はフジールの上から吹っ飛んだ。
間一髪のところで助かったフジールが
息を切らせながら上体を起こすと 腕に鈍い痛みが走る。
サ 「大丈夫 フジール?」
フ 「サンキュ サラシャ。 くっそ・・・。いってぇ」
サ 「見せて。 すぐ治すから!」
血が流れ出すフジールの腕を取り サラシャは治癒を始めると
魔物の爪跡の傷がみるみるうちにふさがって行く。
フジールもサラシャも それに意識が集中していたせいで
先程の魔物が また襲い掛かって来てることに気付いていなかった。
ロ 「フジール! ぼけっとするな! 前を見ろっ!!」
魔物を相手にしながら叫ぶロクスの声に フジールが顔を上げると
サラシャの背後から飛び掛かった魔物が サラシャの肩に牙を突き立てた。
ガルルー!
フ 「サラ・・ シャ・・・」
サ 「くっ・・・ だ、大丈夫。 もう少しで完治出来る・・・ から・・・ 」
牙が食い込む肩からジワジワと血が流れ出し その痛みにサラシャは眉をしかめる。
魔物の牙はどんどん食い込み このままだと腕を引きちぎられかねない。
それでも なお治癒を続けるサラシャ。
フジールは そんなサラシャを目の前に 何をどうすることも出来ず
ただ顔面蒼白でガクガクと震えながら まるで遠くの光景を見ているような
そんな感覚に陥っていた。
そして 駆けつけたロクスが魔物を首をはねるのと同時に フジールの治癒を終えたサラシャは
「これで完璧パーぺキパーフェクト・・・てね」と か細い声で微笑み
そのままフジールの胸へ どさりと倒れこんだ。
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