「魔法書で学んだけど 杜の都へ行くのは初めてだね♪」
「そうだな。 あまり失礼のないようにな。」
「大丈夫よぅ。 テーブルマナーは任せておいてv」
「・・・(何か出ると思ってるのか?)」
「この目で魔法が見れるなんで 超ラッキーだよな♪ 早く見てぇな。」
「・・・(主旨がずれてるだろうが)」
いちいち ツッコむのが面倒なので ロクスは黙って足を進めた。
3人が歩く道は さすが杜の都というだけあって 所狭しと大木が立ち並んでいた。
地面は地面で 腰当たりまでの高さの草が生い茂っている。
昼間の今は木々の間から漏れる太陽の光で 前に進むことは出来るが
夜になれば視界が奪われ やっかいなことになるのは 容易に想像できる。
それまでには なんとかして都にたどり着かなければ。
「少しペースを上げるが 平気か?」
「うん、全速前進!!」
元気の有り余るサラシャを見て ロクスは安心して草を薙ぎ払いながら先を急ぐ。
「もうそろそろ 見えてもいいころなんだが。」
ボワッ!!
「危ない、サラシャ!」
ロクスは突然飛んできた火の玉にすぐさま反応し
サラシャを抱えて その場から飛びのいた。
「うわっ! 危ねっ、間一髪!」
フジールも 持ち前の身軽さで火の玉の直撃は免れた。
護衛隊長らしさを見せたロクスの傍らでサラシャは目を丸くする。
飛んできた火の玉は 自然のものでも人工的なものでもない。
だけど、覚えがある。
魔法書3巻 29ページ。
読んで 見よう見まねでやってみたけど やっぱり出来るわけがなく
ちょっと腹がたったので 手袋に火薬を仕込んで
無理にでも火を発動させようとした。
発動したはいいけど 微妙に火薬の量が多かったらしく お父様のぉ髭を焦がしたっけ。
でもさっきの火の玉は そんなふざけた子供騙しのようなものじゃない。
「・・・これが本物のフレイム(火炎)。」
「こ、これが魔法か!? 魔法なのか!? すっげ!」
「あら、残念。 避けられちゃったわ。」
「誰だ? 姿を見せろ。」
「そんなに殺気だたないで、剣士さん。 アタクシは杜の都の番人タトゥミ。」
そう言って木の陰から姿を現したのは 妖艶な笑みを浮かべたお姉さんだった。
「さっきのはほんの挨拶変わりよ。」
「たいそうな おもてなしだな。」
「悪く思わないでね。
最近はこの杜を荒らすものが増えてきたから こうして追い返しているのよ。」
「不審な侵入者は拒むってわけか。」
「そうゆうこと。 それで、貴方たちはなぜここへ?
迷い込んだのなら 外までお送りするけど。」
「私たち、魔法族の長に聞きたいことがあって来たんです。」
「・・・長に?」
「案内してもらえないでしょうか?」
「何処の誰ともわからないような人達を長の元へお連れするわけにはいかないわ。」
「あ、ごめんなさい。名前も名乗らず 失礼しました。
私はラブチュ王国のサラシャと言います。」
サラシャがペコリと頭を下げて挨拶すると
まさかの訪問者にタトゥミは驚きの表情を見せた。
「ラブチュ王国!? あの西の大国のお姫様?」
「はい。」
「じゃあ、そちらの剣士さんが あのお世話係のロクス!?」
「護衛隊長だっ!」
「そこの君は・・・?」
「俺は サラシャの恋び・・・」
ボカッ
途中まで言いかけたところで ロクスのゲンコツが振り下ろされた。
「ウガッ!痛ってぇー!」
「調子に乗るな。」
「なんだっつーの! 殴ることないだろー!」
「こいつはフジール。 そこそこ仲のよいサラシャの友人だ。」
「そこそこって何だよ? むちゃくちゃ仲いいっての! 恋人だっての!」
「だまれ。国王の許しもなくそんなこと口外するな。」
「だからー、そんなの関係ないっつってんだろ?要は気持ちさ、ハートだよハート♪」
「うるさい。そんな身なりで姫の恋人と言われたらラブチュ王国の恥だ。」
「あ、ひっでぇ! 差別だぁ〜!」
「だいたい何だ、その頬のバンソーコーは!? ずっと気になってたんだ。取れ!」
「これはお茶目キャラの象徴だ! 取るわけにはいかねぇ!」
「お茶目じゃくて ヘボキャラだろう!」
二人のしょうもない言い争いは 終わりそうにない。
そんな二人を 遠目に見るサラシャとタトゥミ。
そしてフジールの頬には バンソーコーが貼ってある事がインプットされた。
「な、なんだか大変そうね・・・(汗)」
「あの二人はほっといていいです。それで案内はしてもらえるんでしょうか?」
「そ、そう?
ラブチュ王国のお姫様となれば 断る理由なんてないわ。コチラへどうぞ。」
サラシャ達は タトゥミの後に続き杜の都へと入り そのまま長のいる社まで案内された。
あ、二人の言い争いは適当なところで終わったそうです。
なんせ 適当な物語ですから。
社の前まで来ると ここで待つようにと言い タトゥミは何もない壁に向かって話しかける。
「タトゥミです。 ラブチュ王国のサラシャ姫がパッピ長を訪ねて参りました。
お通ししてもよろしいでしょうか?」
「サラシャ姫が!? わかった、お通ししろ。」
「かしこまりました。」
“オプン”
タトゥミが壁に手をかざしそう唱えると 壁に人が通れるくらいの穴があいた。
さすが 魔法族。 鍵の勝手も普通とは異なっている。
さぁ、そうぞ。 とタトゥミに促され サラシャ達は開いた道を中へと進む。
サラシャ達が中へ入ると タトゥミはまた手をかざして開いた壁を閉じた。
“クロズ”
「それにしても、使いの者ではなくお姫様が直々に来るなんて・・・
一体何を聞きにきたというのかしら?」
タトゥミは聞いてはいけないと思いながらも 好奇心を抑えられず聞き耳を立てていた。
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